オーディオ

ハイブリッドイヤホン AROMA Witch Girl Pro/S 音質試聴レビュー

魔女っ子 Witch Girl-ウイッチ・ガール-です。

発売したのは昨年の冬で、ポタフェスのAROMAブースで先行試聴をさせてもらった事を覚えている。その時「同メーカーのアンプを併用すると最大限性能を発揮できるよ」と言われ、オイオイ合わせ売り前提かよ…と食指が動かなかったが、装着感だけは全ユニバーサルイヤホンの中でもトップクラスでカスタムIEMに匹敵する程ということだけは記憶している。肝心の音はどうだったかなと、ふと思い立ったのでProとSをセットで聴いてきた次第だ。

まずAROMAというメーカーは何者かを簡単に紹介する。AROMAとは香港のブランドで2014年に設立したオーディオメーカー。一応企業という形をとっているが、カリスマ的な誰かが立ち上げたものではなく、「既製品ではなく自分で拘って作ってみたい」と言う意思を持ったポータブルオーディオマニアが幾人か集ってできた企業体である。規模は大きくないものの自分達が作りたい音を追求できることができ、どのような音が求められているかを各種イベントで調査してカタチにできるという高い機動力を持ち合わせているので、私はそのようなメーカーを応援したい。大企業だと数を売ってナンボの世界ですから、捌ける数と利益が伴わない限りは企画としてポシャってしまう。純粋に音に追求するならば、小規模精鋭の方がユーザーとの距離が近い分、製品化のスピードが早いという強みがある。ただし同形態のメーカーでもカスタマーサイドとの距離が近すぎて近寄りがたい雰囲気を醸し出しているところがある。ヘッドホン祭りやポタフェスといったオーディオ系イベントで散見され、側から見ている分には不愉快極まりないので、そこらへんの距離感を上手く掴んで製品開発に取り組んでほしい。

仕様としては、SがBAドライバー低域*2/中域*2/高域*1の計5基を搭載。Proが低域にDドライバー2基、BAドライバー中域*2/高域*2の計6基のハイブリッド仕様だ。インピーダンスはSが48Ω、Proが16Ω… 意外や意外、Dドラを2基搭載しているProの方が抵抗値が高そうだと思っていたがSの方が鳴らしにくい傾向にある。しかしあくまでこれは数値上の話。実際に聴いてみたところでは、どちらもDAP直差しでは本来の性能を発揮できない…と断言できないにしてもヘッドホンアンプを挟んだ方がより情報量を伝達できる印象。試聴する際にもアンプの有り無しで比較してみると面白いと思う。

今回の試聴ではAK240に初代Hugoを用いた。いずれもモニター系の機種ではないが聴き慣れている機種で十八番を試聴するのが手持ち機種との違いを感じやすい。Hugoは入手してからまだ1ヶ月も経っていないが、この組み合わせで夜のオーディオタイムを楽しむのが日課となっており、おおよその傾向は掴めた。イヤホン・ヘッドホンの試聴にはHugoを噛ませれば鬼に金棒、鳴らせぬものはないし、むしろ火力が高すぎて試聴機を壊しかねないのが恐ろしいところだが、音量玉のカラーは最小限のレッドに留めている。

ここ最近のスタメンイヤホンは、VE6XC(VisionEars)、Brass(DITA)、Dream(同左)。私の音の好みとして、シャキッとクリアなクール系で強弱の付けるべきところを押さえられている音を贔屓する傾向にある。高域はギンギン刺さってくれて構わないし、バスバスうねりを上げる低域も好きだ。というわけで、これから記載するレビューは上記機種を普段使いしている耳で聴いたものとして捉えて頂きたい。

まずはドライバーの多いProを手に取ってみる。黒の筐体に赤のロゴが彫り込まれており中々デザイン性が好み。余談だが、オーディオメーカーって自社ロゴに三角形を使用しがちであるのは何故だろう…

早速耳にはめ込んでみると、一年以上前の試聴時に印象に残っていた通り完璧にフィットする。ドライバーが詰まっているので筐体は小ぶりとは言えないが、数多くの耳型サンプルを採って文字通りユニバーサルに使えるように研究されている。装着感の良し悪しは音の感じ方に大きく影響を及ぼす。出力される音がいくら良くても装着感が最悪に合わないものであれば、仮に購入しても遅かれ早かれ手放すのは目に見えているので、きちんとフィットする機種というのはそれだけで評価できる。ユニバーサルモデルである以上は装着感も良くなければ使う気になれないのは私だけだろうか。

試聴曲は私が普段よく聴くジャンルからいくつかピックアップした。主となるのはポップス、ロック、エレクトロ、ヒーリング。(メタルやジャズも聴くけどこちらは勉強中…)

まずは中高域ボーカルの代表として”夢幻(水樹奈々)”を選んだ。とりわけボーカル帯が最前面にくるかまぼこタイプ。息遣いまで聴こえてきそうな生々しさはあまり感じられないが、低域に埋もれず霞むことなく聴かせてくれる。ロック部門から”刃(THE BACK HORN)”。ドスドス唸りをあげる低域に合わせてヘッドバンギングしたくなる。バスドラのようなメリハリある一撃当たりの勢いが大事な低域が得意。ボーカルも程よく近いところに位置し、ボーカル、ギター、ベース、ドラムのシンプルな4ピースバンドが相性が良い。

次、”満天(Kalafina)”。女性ボーカルという点では水樹奈々と被るが、一聴して「あぁコレコレ」と頷けたのはこちら。音の構成はハイ寄りのボーカル、ドラム、ヴァイオリンがメインでその裏でベースがしっかり土台を築き上げているタイプ。ピアノやストリングスが主体かつ女性ボーカルだとProの持つ空間表現力を余すとこなく発揮できる。

ボーカルなしからChaosTheory、映画サントラのようなダンスミュージックで、ジャンルはEDMか。Hugoの影響によるものと思うが、ハイハットに鋭さを持たせているものの低域は刃と同様に存在感が強い。エレクトロ部門から”Florting Colours(Mare Et Monti)”。ゴリゴリのサウンドではなく気持ちいい目のヒーリング系の曲調でピアノとベースが主体。キラキラ感も余韻も強くなく、これは少し合わない。”満点”のヴァイオリン系統の方が横に広い音場を感じられた。

次にBA5ドラのSを取ってみる。形状はProとニアリーだがDドラが入っていないことから筐体サイズはやや小さい。Proと比べて情報量を抑えてよりマイルドなサウンドに仕上げている。傾向として同じくかまぼこタイプだが、スッキリ聞けるのはSという印象。“夢幻”を聴くとボーカルが色っぽく前面に聴かしてくれるのはこちら。と思いきや”刃”のようにゴリゴリ攻めるサウンドは、いきなりイントロからビートを刻み、まったりとした曲とは裏腹に激しいロック調にも対応できることが伺える。スピードが速すぎると追いつけずに音が潰れる場面もあるが些細なものなので気にするほどではない。そしてProで鳥肌が立った満天だが、Sではバックミュージックはほどほどにボーカルを前に出してくれる。ストリングスとピアノの生み出す余韻、空間的な広がりはSよりもProの方が強く、私の好みに合うのはProだった。

どちらも上流を整えてやらないとこれらの機種の強みである中低域がしぼんでしまいバランスの悪い音になってしまう。しかし、ポタアンを挟んでやると別物のようにイキイキとし出すので、既に所持している方でDAP単騎で運用している方はポタアン込みでも聴いてみてほしい。

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