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IRIVER AK70MKⅡ 音質レビュー ZX300の好敵手で携行性能に優れるバランスプレイヤー

SONYのZX300に合わせてIRIVERからも同価格帯の音楽プレイヤーが同時期に発売されます。よく行くe☆イヤホンに試聴機が置かれていたので平日の昼、人がまばらなタイミングを狙って防音室でガッツリ聴いてきました。こういうレビューって、褒め殺しても「ステマ」と叩かれ、良くない部分だけ書いたらそのメーカーが好きで好きでたまらない人々から袋叩きにされるのは常なのですが、いつも通り是々非々に思うがままに書かせて頂きます。

IRIVERとは韓国のオーディオメーカーで数年前から高級プレイヤー市場を開拓した先駆者的メーカー。モデルチェンジのスパンが極めて速く、新製品が出る度に旧モデルを虐げるような提灯レビューが出回るのにうんざりしているのですが、ごく普通のコンシューマーの立場から書かせてもらう分には製品単体とは切り離して評価します。問題視されている大部分は売り方なので、後述する「価格と保証」の項で触れることとします。

仕様

DACチップや回路が刷新されており「第二世代のフラグシップAK240のDACチップに現フラグシップSP1000の回路を搭載」との謳い文句で登場しました。旧AK70もAK240に使用されていたシーラスロジック製CS4398がシングルで用いられていましたが、MkⅡでは同じものをもう一枚追加したデュアルDACとなりました。

コンセプトとしてはバランス再生時の高出力化と低歪・高S/Nの両立でこの部分にSP1000の設計思想を流用しています。旧AK70との比較で、アンバランス2.3Vrms/バランス2.3Vrms(無負荷時)、今回のMKIIはアンバランス2.0Vrms/バランス4.0Vrms。バランス接続時の出力が大きく向上した代償としてアンバランス時の出力は逆にダウンしています。バランス接続を使うか使わないかで、この機種の評価は大きく変わることと思います。

筐体構造は旧型とほぼ同じですが、横方向と奥行きに2mm程度大きくなり重さは12g増の150gと少しだけ大きくなりました。持ち比べれば新型の方が大きいと分かりますが、この程度ならば誤差範囲。MkⅡだけ持ち歩いていて「前より大きくなったなぁ、重くなったなぁ」と感じることはないでしょう。ただし旧AK70のケースとの互換性はなくMKⅡに流用できないので要注意です。

バッテリー容量は300mAh大きくなり2500mAhとなりました。公称駆動時間は11時間、ギリギリ1日外に持ち出してバッテリー切れになるかどうかといったところで、絶望的に持ちが悪いというわけではありません。ウォークマンのように一度の充電で20時間も30時間も使えるに越したことはありませんが、普段からiPhone用に10000mAhのモバイルブースターを持ち歩いているので個人的にはあまり気にはなりません。

操作性と携行性能

UIの応答速度は第二世代と比べるとやや速く、第三世代と比べると同等といったところ。曲の転送やプレイリスト作成などは過去のモデルと同じなので、AKJr.を除く第二〜三世代のIRIVER製品を使ったことのある方であれば迷うところはないはずです。SONYのZX300やWMシリーズなどウォークマンとの比較であれば、タッチやスクロールの動作性はウォークマンの方がストレスフリーと感じましたが、普段どのDAPを使っているかによって操作の感覚が異なりますので、AK70MkⅡが使いやすいという意見もあって然るべきでしょう。

旧AK70同等コンパクトかつ軽量なので、各種ポタアンとの取り回しも良好と思われます。旧型ではChord社Mojoは合体用のケースも出ていたくらいですから、今回も同様のものが出てきそうです。DITA Awesomeコネクタで手軽に端子部を取り替えられるので、そのようなケーブルが今後手頃な価格で増えてくれば、アンバランス-バランスの切り替えがさらにやり易くなりますね。

音質

イヤホンはDITA Dreamを使用しました。手持ち機材の中で最も癖の少ない機種であり、感度の悪いイヤホンでもDAP単騎で問題なくドライブできるかのチェック、そしてAwesomeコネクタによるアンバランス/バランスの違いを聴き比べるには最適でした。

まずは3.5mmプラグを使ってアンバランスから聴いてみます。旧AK70と比べるとやや出力が落ち、同じ曲でもボリュームを数メモリ上げて同程度の音量になります。音質は輪郭のはっきりしたモニタライクな音で、旧型の特徴をそのまま受け継いでいます。デュアルDACとなっても旧型と同じDACチップなので当たり前といえば当たり前なのかも。じっくり聴き比べると中高域がクリアに綺麗目の音になっています。同時期に発売するZX300とも差別化が図られており、あちらは低域>中高域のいかにもSONYらしいサウンドで人によっては篭っているとも捉えられますし、逆にZX300の音がマッチしているならAK70は物足りないと感じられます。どちらのモデルもバランス接続に重きを置いているので、バランス接続を使わないのであればあえて新型を取るメリットは少ないという認識です。

次にプラグを2.5mmに付け替えます。評判通り、出力が強化されており鳴らしにくいDreamも平然と鳴らせることに驚きました。アンバランス時100/150程度の音量だったのが85/150くらいで十分で、アンバランスと同メモリだと爆音で聴くに堪えられません。音だけ大きくなって特定の音域が破綻するようなこともなく、キッチリ鳴らし込めることを確認できました。さらに鳴らしにくいbeyerdynamic DT1990PROを直指しで聴いてみるも、さすがにインピーダンス250Ωは無理がある様子。120くらいまで上げれば音量だけは取れるんですが、開放型ヘッドホンは素直にアンプを接続しましょう。

MKⅡの目玉はバランス接続とのことなのですが、音質傾向はDACチップが同じAK240とも、回路を受け継いだSP1000系統とも異なります。過去と現在のフラグシップに比類する音と言うのはちょっと無理があるレベル。低音は量としては控えめ、中高音がすっきりと見通しがよく、何に近いかと言うなれば無印AK380(AMPなし)です。ただし傾向が似ているだけで、ロックならばドラム一つとってもスネアとハイハット等ビートに重なるベースラインやエレキギターの解像感や、ピアノやストリングスなど中高域にまたがる余韻感が重要な音はAK380が上手です。だからと言ってAK70MKⅡが聴くに堪えないものかと言うとそうではないですし、Mojoなどのポタアンを併用しなくても単体運用できる水準です。バランス出力数値を比較するとAK380が2.3Vrmsに対してAK70MKⅡが4.0Vrmsなので、ファースト価格が全然別物とはいえ後発優位性が働いていますね。

総じてポータブルプレイヤーとしての完成度は高いです。ただしアンバランスで運用するのであれば旧式で十分で、MKⅡはZX300同様バランス接続に力を入れているのが確定的です。IRIVERのバランス端子は2.5mmと細いため、横方向へ力が加わると曲がったり最悪根元から折れて取りだせなく事例もあります。直接の比較対象となるZX300と音質傾向が異なるので、この辺りの価格帯で何か一つと考えていらっしゃるのであれば聴き比べて良いと思った方を選べばよいです。どっちも良いとなればバランス端子の強度と製品保証の側面からZX300を選択すれば間違いないでしょうね。ちなみに私はボーカルの生々しさはZX300、楽器はAK70MKⅡで甲乙つけがたいところです。

価格と保証

定価で ¥79,800、e☆イヤホンのファースト価格は¥72,000程度。メーカー公式で$699なので安くもなく高くもなく。保証は基本1年ですが、輸入代理店直販での定価購入に限りもう1年延長されて2年保証となります。大手家電量販店によっては延長保証を付けられるところもありますが、直販で自然故障に対する保証がもう1年延ばせる選択肢ができたのは良いことだと思います。参考までにソニーストアでは標準で3年、水没・落下破損にも対応できるワイド保証あり、最大5年まで延長可と、圧倒的にウォークマンの方が充実しています。巨大メーカーであるSONYと比較するのは酷な話ではありますが、保証期間やその内容も購入動機となる得るのでアフターフォローの面で追従できるよう頑張ってもらいたいですね。

さて問題はここから。「エントリーを超えたプレミアムモデル」やら「SP1000を兄貴分とすれば末弟のエントリーモデル」と、AK70 MKⅡに限らずここ最近やたらと「エントリー」という文言が目立って見えるのですが、冷静に考えなくても7万8万っていう価格はエントリー向けではありません。私のようにポータブルオーディオ製品に普段から何万何十万と投じているような者からすれば「7万ちょいならまぁ手が出やすいね」と思えるし、実際欲しくなればポンと出してしまいますが、ここらへんの価格帯を見て「これ安いからエントリー用だね」とは口が裂けても言えません。本当にとっつきやすい価格ってのはせいぜい3万までで、これから入門しようとしている層からすれば「エントリーで7万とかふざけてんの」って声が聞こえてきそうです。

そもそも同メーカーのモデルは製品序列はあれど10万以上のモデルが当たり前で、それらと比べたら控えめ、というだけの話。30万、40万のフラグシップ機が2年足らずで半値程度になるのも、高いところから吹っ掛けて徐々に要求を下げていくドアインザフェイス的な心理が働いているだけです。エントリー機かどうかを判断するのはあくまで買い手側で、売り手側がこの文言を多用するのは逃げ口上としか受け取れません。本当に良いものならば自信を持って市場投入して評価してもらうのが一番の宣伝になりますし、やれエントリーだ、褒め殺しの提灯記事を乱用しなければ手に取ってもらえないなら所詮はその程度だった、というもの。

満を持して登場した旧AK70は定価¥66,000程度でしたね。直近のセールでは新品でも3万円後半で購入できるので、わずか1年で40%OFFの大暴落です。フラグシップ機と同じように推移しており、それらと比べれば手頃価格かもしれません。しかし1年後に半値近くになるものを割高で買う気にはなりません。Fateコラボが済んだ後もゾロゾロ色違いが出てくるかどうかは何とも言えませんけど、まだ発売していないものとしてしばし様子見とするのがベターではないでしょうか。

これまで初期価格に対する信頼性と引き換えにそういうことを平然とやってきてましたし、枠の色だけ変えたモノを後出しで投入するカラバリ商法もやってのけるようなところです。発売後すぐに手を出す気を全く起こさせないんですよね。

MKⅡは製品としては(短期で不良発生しなければ)全く問題ないレベルにあるので、バシバシ売れるとは思います。ただ私は第二世代の頃からこういう売り方に疑念を抱いているので、納得できる説明がないままならば、底値になるのを待って購入する予定です。

※当然のことながら不買運動を呼びかけるようなものではありませんし、それこそ宗教戦争になるので一意見としてどうぞ。

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