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ヘッドホンの定番メーカーbeyerdinamicのリファレンスモニターモデルの最新版"DT1990PRO"を購入しました。

私史上初のヘッドホンで、しかも開放型かつモニタータイプと、今現在所持しているイヤホンとは性格が異なりすぎるものです。もともとポータブル環境はそこそこのDAPとイヤホン複数本あればいいかなと考えていましたが、それを見直さざるを得ないくらい出音の違いに驚きました。

定番ヘッドホンとの音質比較ができれば一番良いことは言うまでもありません。しかしながら私はカスタムIEMを始めとしたイヤホンに慣れきっておりヘッドホンは他には所持していません。他のヘッドホンがどういう傾向か掴めておりませんので、オーディオビギナーに近い立場からツラツラと書いていきます。

購入経緯

ポータブルオーディオは、元々はiPod+ポタアン+イヤホンというところからスタートしました。DAPやアンプを買い換えることはあっても、出口はずっとイヤホン。初めて自分で拘って買った機種はクリプシュのX10。当時2万以下でも「高いな、手が出しづらいな」と思いつつも清水の舞台から飛び降りるように手に取ってみて、こだわりを持てば音ってこんなに変わるんだと驚いたものです。そこからあれよあれよとLYRA→JUPITER→AKR03→VE5→Samba→VE6XCとカスタムIEMにまで手を出してきたわけですが、 X10を初めて聴いた時のような感動がもう一度欲しい。

先入観なく色々なメーカーのものを聴き漁ってきたので、「これぞ!」って思えるイヤホンの弾数が減ってきているのも要因の一つです。最近ではDドラに面白い機種が多いので、この部分で少し沼に陥っているのですが、これ以上イヤホン増やしても…と思ってしまってるのが一番の要因。

そこで今まで手を出してこなかったヘッドホンというジャンルに目を向けるわけです。イヤホンしか取ってこなかった私にとって、ヘッドホンって少しハードルが高いと感じていました。DAP側の出力がショボかったらアンプは必須になるし、室内でヘッドホンでゆったり聴こうと思ったらDAPではなくてホームオーディオ用のシステムをPCで組んでいる人が多かったり。結構そういう方が周りに多いので、難易度が高いなと思っていたんです。

けれどヘッドホンええなぁと魅力に感じたのは開放型の音抜けの良さ。イヤホンでは表現しにくい部分で、この一点だけで手持ち機種とは差別化が図れます。1ヶ月ほど専門店に足繁く通い、最終的にはベイヤーのDT1990PROかAMIRON HOMEの2択に絞りました。どちらも新品でも7万円いかないので即買っても良かったのですが、ちょうど目の前で中古のDT1990PRO(無傷)が補充されたのを見てしまったので何かの縁だと思い購入した次第です。

装着感

本体重量は370g。 ヘッドホンとしては少し重い部類で、長時間使用を繰り返し続けていくと肩が凝りそうです。軽い機種は100g台からありますから、長時間の装着により何かしら身体的な影響(疲労感、痛み)が出てきてもおかしくないですね。

側圧はやや強めでしょうか。装着している間に下にズってくることなくしっかりホールドされている感があります。ミシミシ締め付けられるほどの強さはなく数十分程度試聴したくらいでは問題とは思いませんでしたが、1時間程装着しっぱなしでいると「少し痛いかも…」と感じます。

ヘッドホンってこんなもんなのかな?なにせ他機種の確かなホールド感が分からないので、DT1990PROはキツめですと断言できないのですが、少なくとも緩目ではないと思いました。締め付けがキツいと評されている機種は本当にキツいんだと思いますが、緩いと評判の機種をいざ自分で長時間付けてみると痛みが生じるというのはあり得ます。ヘッドホンのホールド力というのは同一機種でも頭の形状に左右される部分なので、自分で試さないことには分かりませんね。

音質

DT1990PROには2種類のパッドが付属します。音抜けの良いBalanced(バランスド)とよりモニターらしいAnalytical(アナリティカル)の二つ。パッドの材質はほぼ同じですが、両者の違いはドライバー側(装着時の外側)に開けられた孔の数です。円を描くように20個開けられている方がバランスド、東西南北4方向のみ開けられている方がアナリティカルです。前者は孔の数が多いので音抜けが良く、低域表現がアナリティカルと比べて豊かです。後者は孔の数が減り抜けが悪くなるものの、バランスドと比べて低域が減衰し、より分析的に聴くことができます。

とりあえずはアナリティカルで装着、機材環境はAK380+Hugoです。音量はHugoの下から2〜3段階、黄緑あたりでちょうど良いです。イヤホンで同音量を稼働させると超爆音になるので、インピーダンス250Ωがいかに鳴らしにくいかということを思い知らされます。余談ですが、同じくbeyerのフラグシップモデルT1 2ndに至っては600Ωですので、DT1990PROが可愛く見えるほどの高い抵抗値… 250Ωだとかろうじて第三世代AMPの110/150くらいで鳴らせますが、600ΩとなるとDAP直挿しは無理ですね。

音質傾向としては評判通り味付けの薄いモニター系。イヤホンに慣れているからか、一聴して空間表現力の違いに驚きました。耳を覆うように装着しているので、スピーカーのように全方向から聴こえる鳴り方ではないのですが、45mmのテスラドライバーによって繰り出される音は、極めて自然体でずっと装着してしっとり聴いていたいほどの心地よさがあります。

ベースやドラム(バスドラ)に代表される低域は必要十分な量が出ていますが、中高域を気持ちよく聴かせてくれる土台の役割です。激しめのロック調の曲でも、唸り響くような低音よりエレキギターの中高音が突き抜けていくよう爽快さを優先する私にとってはクドさを感じない絶妙なバランスでちょうど良いです。 ただ裏を返せばビートを刻みたくなるような躍動感は薄いとも言えます。

中高域は、声質(男-女)、人数(ソロ-マルチ)、録音方法(ライブ-スタジオ)関係なくbeyerらしいダークな雰囲気で、その表現力には惚れ惚れとします。土台作り担当の低域がきっちり仕事しているが故に、中高域は味付けが少なくても明瞭自然に伸びていきます。苦手とするジャンルが見当たりませんが、音数の少ない(または楽器の音色が分離しやすい)ジャズ系の曲調やアカペラなどは特に際立つ印象です。ボーカルだけを広い音場で臨場感高く鳴らせる機種ってこれまであまり取ってこなかったので、室内でゆったり音楽を楽しむのにはパーフェクトです。

楽器ごとに言うなれば、シンセライザーやエレキのような電鳴楽器はキレよく、ドラムや太鼓などの打楽器は一打一打が聴き取れるほど解像感が高いです。ヴァイオリンやチェロなどのストリングスやピアノは音のつながりが流麗で曲全体の空間表現に一役買っています。透き通った音ではあるのですが、音自体のリリースは速くはなくスッと消えゆくことなく余韻が深く残ります。フルートやサックスといった吹奏楽器も同じ傾向で、これらの楽器を多用する曲はモニター系だけどメリハリが強くノリ良く聴くことができます。

ただしアナリティカルだとクラッシュシンバルを思いっきり叩いたような高音が刺さりがちです。私はそういうキツい高域が好きなのでむしろプラスに働いていたり。この部分はパッドをバランスドに変えることである程度改善されるので、アナリティカルで高域が刺さるならばバランスドで試してみると良いですね。

パッドによる変化

ここまでアナリティカルで聴いたのでバランスドに換装してみます。パッドごときで音が変わるの?と半信半疑だったのですが、評判通りハッキリ聴き分けられるくらいの違いがありました。アナリティカルパッドよりも開けられている孔数が多い事で音の抜けが良くなります。低域が増えるというより密閉されていた中高域が抜けることで、もともと出ていたであろう低域が姿を見せた感じ。(密閉と言うのはバランスドに比べて孔数が少ないということです) 中高域にクリアさは失われてしまうものの、シンバルの刺さりは消失し躍動感溢れる低域を楽しめます。

おそらくオープンダイナミックでパッドまで抜け良く作られたバランスドが本来のDT1990PROの姿なんでしょうけど、私はそれ以上にアナリティカルが気に入りました。その名の通り分析的でモニター用途に使うならば断然こっちだと思います。 音の変化はVisionEarsのVE6X Controlのようなスイッチ変化に通づるところがあり、パッドさえ用意しておけば一つで二度美味しい機種であることは間違いありませんね。

サクッと音が変えられるなら言うことないのですが、イヤホンのイヤーチップほど手軽に済ませることができず、初めてパッド交換した時はかなり時間が掛かってしまいました。取り外したのはいいもののどうやって付けるの?状態。工具レスで慣れれば1分以内に付けられるのですが、円周上に三角形の溝が一箇所作られており、これに沿ってパッドをクルクルと回していけば完全に嵌まる仕組みです。私が不器用なのか中々上手くいきませんでしたけれど、やり方自体はシンプルですので「パッド交換どうしたらいいの?」と迷われている方がおられれば、三角形の溝に沿って根気よく回し続けて下さい。

まとめ

本当に買ってよかった。ヘッドホンってそのサイズ感から持ち歩こうとは思わないし、家専用に買うのもなぁ…と乗り気じゃなかったけれど、室内だからこそ音漏れ気にせず使えると考えればデメリットだと思っていた部分が無くなります。オープン型ヘッドホンは用途として外で使うものじゃありませんから、家ではDT1990PROをメインに、外では気分に応じて各イヤホンを使い分けと若干スタイルが変わりました。

ただ困ったことに、その曲本来の帯域バランスを知った後で、所持しているイヤホン全て(ほとんど味付けギンギンのリスニング系)を聴き直すと「私の思う"良い音"って何ぞ?」という問題提起が再燃することになってしまいました。それまで自然だと思っていた音のつながりもDT1990PROと比べると違和感と捉えられたり、使用頻度が低くなる機種が発生することやむ無しです。手放すまでには至っていないので、DAPやアンプを組み替えつつ時間を掛けて比較していきたいですね。

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