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ブランディング考察

実際10万20万ものイヤホンを買う層がどれだけいるのかって話です。

昨今のポタオーディオ時勢的に価格帯も大幅に上がってしまいましたが、音さえよければ価格は関係Nothingという人も一定数存在します。ポタオーディオのインフレストリームは終息を迎えようとしているにも関わらず高価格帯モデルを投入した要因はなぜでしょうか。SONYではこれまで20万前後のイヤホンは扱っておりませんでしたし、なんなら10万前後もラインナップがありませんでした。フラグシップに位置づけられていたのはXBA-Z5の5万円台で、それ以上の価格帯はSONYにとっても未知の領域。

それでも市場購入に踏み切ったのは確実にシェアを取れる公算があるからに他なりません。数年前に巻き起こったハイエンドイヤホンブームは収まりつつある状況ではありますが、個人的にはなんやかんだ言われつつ一定数売れると思います。その要因を探っていきましょう。

vsライト層

音楽プレイヤーといえばウォークマン、もしくはiPod(Apple)を使っている方も多いと存じます。最近ではハードとしてはスマホ、ソフト面でもストリーミングが主流になっており一見逆風に見えます。けれどもライト層はどこまで言ってもライト層です。そういった層が10万も20万もイヤホンやプレイヤーにお金を注げるとは到底思えません。プレイヤー単体を購入するとしても下位モデルに限定されるでしょう。この層は機能面よりもコストパフォーマンスを重視する傾向にあるので、ミドルレンジ~フラグシップを勧めたところで

「20万のプレイヤーも2万のプレイヤーも同じようにデータを入れれば使えるんでしょ?」

って言われるがオチですよ。ライト層にはローコストが大前提なので、付加価値をPRしてくるならばまずは価格を抑えてから話してネってことです。イヤホンを買うにしてもせいぜい1万円が限界でしょう。付属イヤホンから1万前後でも大きく音質向上が見込めますし、そういった機種は数を売ってなんぼなので全体の売り上げとしてみれば無視できるものではありませんが、今回の新イヤホンは10万前後の価格帯でライト層にとっては無縁の存在です。SONYにとっても最初からマーケティングの対象にしていないでしょう。

vsマニア層

ライト層よりもこだわりが強いユーザー層をマニア層と名付けてみました。ライト層よりもこだわりが強いのでマーケティング次第では大きな実りになる可能性を秘めています。

Twitterなど限られたコミュニティの中で交友関係を広げると、「なんだ皆ハイエンド級買ってんじゃん」という錯覚に陥りがちではありますが、このクラスのモデルに手を出すのは全オーオタの中でも極々僅かと思っています。価格のインフレに歯止めが効かなくなったことに嫌気が差してオーディオをやめる人もいますし、特に近年では格安中華だけでなく低価格帯の良モデルを展開するメーカーが増えてきたことでせいぜい3万円くらいのモデルで十分と考える人が増えて、イヤホンに興味を持つ人は増えても、一部人気モデル以外のハイエンド帯は厳しいというのが現状。だからこそ製品の開発サイクルが非常に速く、一部のヒットモデル以外は一年も経てば投げ売り、継続需要がなければ二年も経たずに生産中止になる傾向があります。これは開発サイクルを短くすることで一つあたりのモデルに対する投資を抑えられているからできることで、何年も時間とコストを掛けて生み出された製品となるとそうやすやすと生産中止はできません。

それならばライト層よりは数は少ないけれども一定数いるマニアが手に取ってくれるならば、数撃ちゃ当たるではありませんけれど、一発の利益も大きい機種がそれなりに売れてくれればOKと考える方が何かと都合が良さそうです。

まぁあんまりやりすぎると

「このメーカーは一瞬で生産中止にするわ、セールかかるわ、すぐに購入するメリットなし」と見做される諸刃の剣なので、

SONYを含めた世界各国の老舗メーカーが取るには難儀な手法ではありませんが、ミドルレンジ〜フラグシップ級の新製品を出しても全く見向きもされない時代でもありません。対マニアに特化したマーケティングをきちんと考えれば売れることはもう実証済みですよね。

ウォークマンの成功

その好例がウォークマン。直近のSONYのポータブルオーディオ関連製品で、フラグシップのWMシリーズ(2016)とZX300(2017)があります。

数が出ない代わりに販売価格を高く設定しているのは明らかで、ウォークマンもそれまでのZX2(10万前後)からWMシリーズでは廉価版のWM1A(12万)とWM1Z(30万)の2種類を投下したところ想定を上回る売れ行きを示したこともあり、結果的にSONYのオーディオ部門(ホームエンタテインメント&サウンド分野)では2017年に全体の14%を占める585億もの利益を叩き出しています。

WMシリーズが登場するまでは海外メーカーを中心に"名ばかりの高級化"が進められ、SONYは一歩出遅れた立場にいました。名ばかりと言うのは、初動価格だけ30万も40万も吊りあげるくせに値引き値引きの嵐が吹き荒んだことでわずか2年で半値まで下がってしまうIRIVERというメーカーが業界でのさばっていたこと。

こちらの記事でまとめておりますが、今売れればそれでヨシとするクソみたいなマーケティング手法をとっており、この競合としてSONYも頑張ってほしいと思っていたところにWMシリーズが登場した次第です。

圧倒的ブランド力と保証の手暑さ

私は物を買う時に国産であることにはこだわりません。製品に魅力の感じられないメイドインジャパンよりも中国香港韓国などアジア圏の新興メーカーが手掛ける独創性あふれる製品の方が購買意欲がそそられるってものですが、おそらくそういう考えのコンシューマーは少数派だと思います。

売れない売れないと言われつつもSONYは確たるブランド力がありますし、やれ信者だやれ不買だと言い争うのは一部のネット民だけであって世間的にはどこの馬の骨とも分からん新興メーカーよりもSONYの安心感を買うという意味合いで国産ハイエンドが欲しいユーザーを囲い込める力があるのではないでしょうか。

大半のメーカーは新品保証1年と設定しています。20万も30万もするプレイヤーの保証が一年ぽっちってどこまでも胡座をかきやがってって思ってしまうのですが、SONYに関しては直売店(SONY STORE)経由であれば3~5年の長期保証を付けられます。

イヤホンであればSENNHEISERやbeyerdynamic、finalなどが2年保証を標準搭載していますけれど、今回のSONY新イヤホンはそれを上回る標準3年、最大で5年という保証の手暑さ。

「ただ売れればいいのだよ」という態度しか示さないIRIVERとは土台が違いすぎますし、投げ売りせずに原因特定まで含めたアフターフォローを一貫して対応できる懐の広さがないとブランド力なんて付いてきません。

まぁSONYもSONYタイマーって言われますが、それなりに数が出てれば保証が切れた直後に不具合が出る個体も出てきてしまうのはある種仕方ないと思いますし、丸っと5年間も享受できたならば十分すぎるのではないでしょうか。

売り切れ御免になるか否か

"IER-Z1R"は特に日本だけ待たされていた感が強く、その反動で期待値がべらぼうに高くなっているものと思いますが、構造的に大量生産できるものではないこととファーストロットはさらに生産数を絞って様子見、結果オーダーが殺到して二次入荷待ちとなりそうな気がします。

昨年11月に登場したJVC "HA-FW10000"も少量生産の中で注文が立て込んでいるため納期1~2ヶ月のバックオーダーとなっています。

限定モデルでもないのですぐに飛びつく必要もありませんし、このクラスのモデルを聴かずにオーダーする勇気は持ち合わせていませんが、私としては発売日までに試聴をした上で購入するか否かを判断したいと思います。

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