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Campfire AudioのCOMETが先月発売し、ATLASはいつやいつやと待っていたら突然発売告知が上がってきて驚きました。国内定価は¥165,000、それまでVEGAの¥157,000が上方向に旗艦モデルとしての価格は更新されています。ダイナミック型は独自開発しやすいことから各社それぞれ思うような音ができたら結構思い切った定価設定をする印象ですね。同時期に発売となったCOMETは国内25,000と最安値を更新しています。それでも音質に拘りのない方からすれば頑張れば手を出せるレベルの価格帯で、気軽に購入できるものではないのでしょうが。

さて当記事ではATLASの試聴結果をまとめます。評価軸を明文化してから初のレビューとなりますが、いつも通り思ったままに記載していきたいと思います。

COMETのレビューはコチラ!

ATLASのスペック

筐体材質は同期のCOMETと同じくステンレススチールが採用されています。これまでのCampfire Audioのダイナミックモデルは流体金属を採用していたので、ステンレスが採用されるのは珍しいですね。finalのE3000/E5000は削り出しなのに対して、このATLAS/COMETは落とし鍛造成型、CNC加工を経て、鏡面仕上でステンレス特有の艶やかなデザインとなりました。

採用ドライバーはダイナミック1基のみ。COMETはBA1基、シングルダイナミックモデルはこれまでLYRA、LYRAⅡ、VEGAが存在しており、これで4機目です。もともとCampfire AudioのCEOであるKen氏はSENNHEISERのIE800に感銘を受け、それに匹敵するモデルを作りたいという思いからファーストモデルLYRAを打ち出しました。そこからBA多ドラ、ハイブリッドモデルなども数多く手がけてきましたが、Campfire Audioと言えばダイナミックと個人的に思っています。(ANDROMEDAが最人気なので一般的にはそうではないかもしれませんが)

採用されているダイナミックドライバーはVEGAで採用されたA.D.L.C(アモルファス・ダイヤモンド・ライク・カーボン)をブラッシュアップさせたものです。(A.D.L.Cはダイヤモンドとグラファイトのハイブリッド素材であるアモルファス(非結晶ダイヤモンド)を指し、高硬度/高剛性を両立した素材) VEGAでは8.5mm径でしたがATLASは設計を見直し10mm径のドライバーを採用し、周波数帯域幅を広くして、帯域毎の歪みを小さく、さらに応答性を高められるように見直しています。

採用されているケーブルはATLAS専用に開発されたPure Silver Litz Cableが付属します。もともとCampfire Audioの元となるALO Audioはケーブル屋なので、各モデルと相性の良い高品質なケーブルがデフォルトで付いてくるのはありがたいですね。このケーブル単体でも現地価格で$249(≒¥30,000)もしますから、下手にリケーブルすると音質が低下してしまうかもしれません。ケーブル端子はこれまで同様MMCXです。

装着感/遮音性

  1. 筐体が耳にマッチしており収まりも完璧。遮音性も高く、騒がしい店内でも大きくシャットアウトしてくれる。
  2. 装着していてストレスフリー、かつ遮音性も確保できている。
  3. 装着感は良好だが遮音性が伴っていない。イヤピによる調整必須、屋外用途でギリギリ使えるレベル。
  4. 装着できなくはないが、装着感もいまいちで遮音性も低い。
  5. 痛みを伴うレベルで筐体が合わず、装着できない。極めて絶望的。

この重み付けでいうならばBランク、装着して特にストレスを感じないのと、耳障りな外音はしっかりカットされています。イヤーピースでしっかり耳孔の隙間を埋めてくれるので、フォーム型に変えれば更に遮音性は高められそうです。その期待を込めて-4としています。付けてて痛みも感じませんし、ユニバーサル機の中ではこのファクターはかなり優れていると感じました。

Campfire Audio史上最も良好です。VEGA形状のものは装着感は悪くないけど遮音性がイマイチで、ANDROMEDA形状のものは遮音性は悪くないが装着感はイマイチでした。ATLASは耳掛けタイプではありませんが、見た目に反してフィット感良好、遮音性もそこそこ高い。シリコンイヤピだと少し大きめのサイズを選ぶと良い気がします。(押したらペコペコ鳴りますが)

Etymotic Research ER4XSRやfinal Eタイプのように耳奥に突っ込むタイプなので、カナルのカーブがキツい耳をお持ちの方は合わせづらいかもしれません。同期のCOMETもステンレススチール筐体ですが、ハウジングは共通ではありません。COMETの方が若干短いので、奥まで押し込めるのはATLASの方です。ハウジングの長さが若干変わるだけで装着感も大きく異なるので、COMETでは合わなかった、という方は試してみてください。

音質

相当好みの部類。海外のレビューではANDROMEDAのキラキラ感とVEGAの重厚な低音が融合された音=ANDROVEGAと話題になっていましたが、確かにその傾向が聞き取れます。あくまで傾向だけ。個人的にはVEGAほど低域のキレとゆったり感を上手く調整しているとも思わないし、ANDROMEDAほど高域の煌びやかさは感じられませんでした。

ATLASの音の傾向としては中域が分厚いエネルギッシュなタイプ。低域と高域も十分すぎるが、重低音は出せないし、高域の刺さりも殆ど感じない。刺さるか刺さらないかの絶妙なポイントでバッサリ切っていますね。VEGAの方が高域出ているような。もう少しハイが出てくれてもいいのですがそこまで要求するのは高望みでしょうか。

ボーカルは近すぎず遠からず。ボーカルも楽器の一部で楽器の音と横並びになって押し寄せてくる感覚です。楽器の音が心地よく「ボーカルは最前線に立ってくれなくていい」と捉える楽器至上主義はもちろん、ボーカルこそ最重要ファクターと捉えるリスナーの期待に添える完成度の高い音に仕上がっています。とにかく情報量が多くてエネルギッシュ。野太い低域と分厚い中域、刺さらない高域の絶妙なバランスが光ってる感じ。バリバリのリスニング機でめちゃくちゃ好みです。

音場は狭すぎるとは思いませんが、横にブワッと広がるステージの広さはありません。なんにせよ音のアタック感が強いので、バンド形態のジャンルや電子楽器は相性が良いです。ただ音を分解しまくるので音数が多いと聴き疲れします。

余韻もないかな~と思いきや意外にもピアノやストレングスのタッチ、指や弦をリリースしたあとの残響感も楽しめてクセになります。クラシックやオーケストラは広い音場が求められて苦手ジャンルと捉えられますが、バーやレストラン程度の広さで生演奏してくれるジャズ音源はまずまず。またロックにピアノやヴァイオリンを加えたシンフォニックロックもATLASが強さを発揮できる音楽ジャンルです。

テンポの速い曲調も音粒がはっきりしており解像感が高いです。ハイエンドダイナミックモデルにRE2000がありますが、こちらは中高域を主としてよ〜く聴けば解像感が高いけれども流し聴きする分には全ての音を自然に融和させてくれるナチュラルな音でした。対するATLASはそういった自然さを無視してとにかく分解して攻め入るタイプ。分析的に聴く分にはいいですが、音楽としての自然さを楽しむならばRE2000が上手と思いました。

価格

国内定価¥164,916、Campfire Audio 旗艦モデルの価格更新です。現地価格も$1299でだいたい14万弱。これまで同様やや日本価格が高い印象は変わりません。付属するケーブルのグレードが高いことを加味しても割高、シングルダイナミックのハイエンドモデルは各社ラインナップしてきており、いずれも音質面での特性が異なります。普段聴く音楽との相性によって100%万人共通のモデルは存在しないので、よく試聴して「これぞ」と感じられる機種を選べたら一番良いでしょう。正直私はATLASをかなり気に入ってしまいましたが、財布力が貧窮しているのですぐには手を出せません…笑

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