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SONYの新製品がいろいろ発表されました。ラインナップとしては、BAマルチのIER-M7及びIER-M9、DD-BAハイブリッドのIER-Z1Rの3モデルが登場します。

2年前にウォークマンが刷新され、今年はイヤホン・ヘッドホンにメスを入れてきました。機材にこだわらない一般的な感性をお持ちの方にとって10万、20万のイヤホンなんて狂気の沙汰でしょうが、計3モデルの特徴を踏まえつつ、実際に売れるか否か簡単に考察してみたいと思います。

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SONY の新イヤホン3機種

IER-M7、IER-M9

IER-M7はBA4基4Way構成で、筐体は樹脂製、内部ハウジングには減衰性の高いマグネシウム合金が使われています。

IER-M9はそれより1BA多い5BA5Way構成で、筐体はマグネシウム性、内部ハウジングもマグネシウム、振動板もマグネシウム合金、スーパーツィーターに加えてクロスオーバー回路にフィルムコンデンサが採用されているのが特徴です。IER-M7にはこれらの技術は用いられていないので価格面でもM9の方が4割程高くなっております。

再生周波数帯域は5Hz~40kHz。インピーダンスはIER-M9が20Ω、IER-M7が24Ω、感度はどちらも103dB/mWです。

IER-Z1R

そしてフラグシップに位置するのはIER-Z1R。2DD-1BAのハイブリッド構成で、5mmダイナミックドライバー、12mmダイナミックドライバー、BAドライバーはいずれも自社で開発することで細かいチューニングを実現。

筐体材質は耐腐蝕性の強いジルコニウム合金を採用、ジルコニア(酸化ジルコニウム)を還元処理したものがジルコニウムで、この工程に時間も費用もかかるため高額になりがちで、さらに削り出しによる加工が必須になるため、あえてジルコニウム合金を筐体に採用するメーカーはほとんど見られません。

5mmダイナミックドライバーにはアルミニウムコーティングLCP(Liquid Crystal Polymer)を採用。12mmのダイナミックドライバーには、軽量かつ高剛性のマグネシウム合金のドーム型振動板を採用。ドームの端には5mmドライバーでも採用されているアルミニウムコーティングが用いられています。高域用のBAドライバーの振動板もマグネシウム合金製。これはIER-M9やIER-M7の技術を流用していますね。インナーハウジングはマグネシウム合金製で、位相を整えつつ分離感を高められるよう内部の3ドライバー配置を調整しています。

再生周波数帯域は3Hz~100kHz。人間の可聴行きは20kHzがせいぜいってところなのでオーバースペックを極めていますが、精神衛生上この範囲が広い方がいいと感じる人も多いでしょう。

価格帯

香港オーディオショウで発表された価格は

IER-M7が$5,190HKD(≒¥73,000)

IER-M9が$9,490HKD(≒¥134,000)

IER-Z1Rが$13,990HKD(≒¥196,000)

2018年8月15日現在のレート換算で、SONYは海外よりも日本国内を優遇する傾向にあるため、ここから20%くらいカットした価格が定価になる可能性があります。

希望的観測ですがIER-M9が11万弱、IER-M9が6万弱、IER-Z1Rが16万弱で出てくるかもしれません。

またシンガポールのSONYストアではIER-M9がS$1599(¥128,000)、IER-M7がS$899(¥72,000)と若干HKDレートより安くなっています。IER-Z1Rはまだ商品ページがアップされていないため、発売タイミングとしてはIER-M7/M9が先に市場投入される可能性が高いですね。

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売れるか否か

昨今のポタオーディオ時勢的に価格帯も大幅に上がってしまいましたが、音さえよければ価格は関係Nothingという人も一定数存在します。ポタオーディオのインフレストリームは終息を迎えようとしているにも関わらず高価格帯モデルを投入した要因はなぜでしょうか。SONYではこれまで20万前後のイヤホンは扱っておりませんでしたし、なんなら10万前後もラインナップがありませんでした。フラグシップに位置づけられていたのはXBA-Z5の5万円台で、それ以上の価格帯はSONYにとっても未知の領域。

それでも市場購入に踏み切ったのは確実にシェアを取れる公算があるからに他なりません。数年前に巻き起こったハイエンドイヤホンブームは収まりつつある状況ではありますが、個人的にはなんやかんだ言われつつ一定数売れると思います。その要因を探っていきましょう。

vsライト層

音楽プレイヤーといえばウォークマン、もしくはiPod(Apple)を使っている方も多いと存じます。最近ではハードとしてはスマホ、ソフト面でもストリーミングが主流になっており一見逆風に見えます。けれどもライト層はどこまで言ってもライト層です。そういった層が10万も20万もイヤホンやプレイヤーにお金を注げるとは到底思えません。プレイヤー単体を購入するとしても下位モデルに限定されるでしょう。この層は機能面よりもコストパフォーマンスを重視する傾向にあるので、ミドルレンジ~フラグシップを勧めたところで

「20万のプレイヤーも2万のプレイヤーも同じようにデータを入れれば使えるんでしょ?」

って言われるがオチですよ。ライト層にはローコストが大前提なので、付加価値をPRしてくるならばまずは価格を抑えてから話してネってことです。イヤホンを買うにしてもせいぜい1万円が限界でしょう。付属イヤホンから1万前後でも大きく音質向上が見込めますし、そういった機種は数を売ってなんぼなので全体の売り上げとしてみれば無視できるものではありませんが、今回の新イヤホンは10万前後の価格帯でライト層にとっては無縁の存在です。SONYにとっても最初からマーケティングの対象にしていないでしょう。

vsマニア層

ライト層よりもこだわりが強いユーザー層をマニア層と名付けてみました。ライト層よりもこだわりが強いのでマーケティング次第では大きな実りになる可能性を秘めています。

そもそもポータブルオーディオというジャンルはプレイヤーであれ、イヤホンであれ、ヘッドホンであれ、製品の開発サイクルが非常に速く、一部のヒットモデル以外は一年も経てば投げ売り、継続需要がなければ二年も経たずに生産中止になる傾向があります。

これは開発サイクルを短くすることで一つあたりのモデルに対する投資を抑えられているからできることで、何年も時間とコストを掛けて生み出された製品となるとそうやすやすと生産中止はできません。

それならばライト層よりは数は少ないけれども一定数いるマニアが手に取ってくれるならば、数撃ちゃ当たるではありませんけれど、一発の利益も大きい機種がそれなりに売れてくれればOKと考える方が何かと都合が良さそうです。

まぁあんまりやりすぎると

「このメーカーは一瞬で生産中止にするわ、セールかかるわ、すぐに購入するメリットなし」と見做される諸刃の剣なので、

SONYを含めた世界各国の老舗メーカーが取れる手法ではありませんが、ミドルレンジ〜フラグシップ級の新製品を出しても全く見向きもされない時代でもありません。対マニアに特化したマーケティングをきちんと考えれば売れることはもう実証済みですよね。

ウォークマンの成功

その好例がウォークマン。直近のSONYのポータブルオーディオ関連製品で、フラグシップのWMシリーズ(2016)とZX300(2017)があります。

数が出ない代わりに販売価格を高く設定しているのは明らかで、ウォークマンもそれまでのZX2(10万前後)からWMシリーズでは廉価版のWM1A(12万)とWM1Z(30万)の2種類を投下したところ想定を上回る売れ行きを示したこともあり、結果的にSONYのオーディオ部門(ホームエンタテインメント&サウンド分野)では2017年に全体の14%を占める585億もの利益を叩き出しています。

WMシリーズが登場するまでは海外メーカーを中心に"名ばかりの高級化"が進められ、SONYは一歩出遅れた立場にいました。名ばかりと言うのは、初動価格だけ30万も40万も吊りあげるくせに値引き値引きの嵐が吹き荒んだことでわずか2年で半値まで下がってしまうIRIVERというメーカーが業界でのさばっていたこと。

こちらの記事でまとめておりますが、今売れればそれでヨシとするクソみたいなマーケティング手法をとっており、この競合としてSONYも頑張ってほしいと思っていたところにWMシリーズが登場した次第です。

参考までにWM1Zの発売価格は30万でしたが、発売から2年近く経過した2018年8月でも新品28万程度と大きな落ち込みはありません。後出しでも10~30万レンジのプレイヤーがしっかり売れ、今でも価格を維持し続けているのでやっぱり資本のある会社は強いと思いますし、こういった巨大な老舗こそが頑張ってくれないと業界全体が下細りになるのは自明の理です。

圧倒的ブランド力と保証の手暑さ

私は物を買う時に国産であることにはこだわりません。製品に魅力の感じられないメイドインジャパンよりも中国香港韓国などアジア圏の新興メーカーが手掛ける独創性あふれる製品の方が購買意欲がそそられるってものですが、おそらくそういう考えのコンシューマーは少数派だと思います。

売れない売れないと言われつつもSONYは確たるブランド力がありますし、やれ信者だやれ不買だと言い争うのは一部のネット民だけであって世間的にはどこの馬の骨とも分からん新興メーカーよりもSONYの安心感を買うという意味合いで国産ハイエンドが欲しいユーザーを囲い込める力があるのではないでしょうか。

大半のメーカーは新品保証1年と設定しています。20万も30万もするプレイヤーの保証が一年ぽっちってどこまでも胡座をかきやがってって思ってしまうのですが、SONYに関しては直売店(SONY STORE)経由であれば3~5年の長期保証を付けられます。

イヤホンであればbeyerdynamicやfinalが2年保証を標準搭載していますけれども、今回のSONY新イヤホンはそれを上回る標準3年、最大で5年という保証の手暑さ。「ただ売れればいいのだよ」という態度しか示さないIRIVERとは土台が違いすぎますし、投げ売りせずにアフターフォローまで対応できる懐の広さがないとブランド力なんて付いてきません。

まぁSONYもSONYタイマーって言われますが、それなりに数が出てれば保証が切れた直後に不具合が出る個体も出てきてしまうのはある種仕方ないと思いますし、丸っと5年間も享受できたならば十分すぎるのではないでしょうか。

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まとめ

少なくとも同時に発表された90万弱の特大プレイヤーDMP-Z1と比べると間違いなくそれなりに買われていくでしょう。DMP-Z1も欲しい人だけが買えばいいというスタンスで、あまりに売れ行きが芳しくないならば望まれていない点を改良したモデルにブラッシュアップしてくるでしょう。高いことが不満ならば下げますし、高くても予測より数が出るなら据え置き、それに対して不平不満を言うなれば最初からマーケティング対象ではないという話です。

イヤホンも同じで、10万前後出せる人はIER-M9やIER-M7がその人に紹介できる製品になりますし、20万まで出せるならばフラグシップのIER-Z1Rも視野に入れられます。こういう人らは最初から圏外なんで、自分が興味のない分野にケチつけることは恥ずかしいことだという自覚がないんでしょうね。

まぁそれにしたってDMP-Z1は何を思ってあの設計にしたのか全く理解に苦しみますが、そう思ってしまう私もセールス対象外なのであんまりネガキャンしない方がいいですよね笑

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