半年ぶりのイヤホンレビューです。ここ数ヶ月、手持ちのVE5とVE6XCに満足し切っている自分がいますが、やっぱり新製品は気になりますよね。今回はSIMGOT社よりデモ機の提供を受けたもので、良い部分・そうでない部分、全部引っくるめて思ったままにレビューしたいと思います。
MT3 PRO概要
MEETUREというSIMGOT系列ブランド内のモデルです。高くても1万円以内に価格を抑えているとのことで、販売はSIMGOTが行います。サラッと概要は以下の通り。
- シングルダイナミックドライバー
- 再生周波数帯域:15Hz - 40kHz
- 音圧感度:108dB@1000Hz
- インピーダンス:18Ω
- リケーブル:可 (2pin)
- 付属品:EK3と同じ4wケーブル、イヤーピース(シリコン系2種類)、保証書
- 本体カラー:4色展開(クリア、ブラック、グリーン、ピンク)
- 価格:7,800円
- 発売日:2020年2月1日
開封、本体チェック
(←)化粧箱は小ぶり、(↓)付属品一式
付属のイヤーチップはシリコンタイプが2種類付属。
中高域寄りのタイプIと低域増強型のタイプIIがあります。
カラーはグリーンにしました。ベースはクリアーとなっており、搭載されたダイナミックドライバーが確認できます。この価格帯でビルドクオリティをどこまで求めるか難しいところですが、シェルの透明度はまずまずで、中空ではあるもののドライバーはしっかり固定されてそうな感じ。
EM2との比較、手前側がEM2、上側が今回のMT3 PRO
EM2の方がノズルの角度が強め
付属ケーブルは毎度のことながら耳掛け部のチューブの形状記憶が強烈。付属ケーブルは一般的なカスタム2pinではなく、いつぞやのUEやqdcのような強度が確保されているタイプの2pinなので、ピンが折れたり孔が緩々になったり、というような事故が抑えられる工夫が施されています。
装着してしまえば気になりませんが、ケーブルを巻く際は主に耳掛け部分がまとまりにくい気配。ケーブル自体はしなやかなので個人的にはチューブだけ外して使いたい。また端子部分は本体に嵌め込む時は分かりやすくヌッ!って入るのに、逆に本体から外す際は少しコツがいるので注意が必要です。汎用MMCXのように同じ力で真っ直ぐ引き抜けばリケーブルできますが、頻繁に着脱しないほうがいいかもしれません。
装着感
- カスタムIEMレベルの装着感。筐体が耳にマッチしており収まりも完璧。遮音性も高く、騒がしい店内でも大きくシャットアウトしてくれる。
- 装着していてストレスフリー、かつ遮音性も確保できている。
- 装着感は良好だが遮音性が伴っていない。電車内ではやや使い辛いかも。
- 装着できなくはないが、装着感もいまいちで遮音性も低い。
- 痛みを伴うレベルで筐体が合わず、装着できない。極めて絶望的。
イヤーピースは付属のものではなくSpyral Dot++を使用。Cランク相当の装着感で悪くない。筐体が小ぶりかつイヤピごとノズルも押し込むことでホールドさせるタイプ。当方比較的耳穴が小さい上に左右カーブが全く異なるどうしようもない形(右は曲がっているが左はストレート)をしているのですが、SIMGOTのモデルはどれも相性が良くて不快感は一切ありません。
遮音性に関してはEM2と比較するとややスキマができてしまいます。イヤーピースで改善の余地アリですが、「人による」としか言えないので試着できるならば装着して確かめて頂きたい。
音質
使用DAPはIRIVER "SE100" 普段メインで使用しているイヤホンはVE5/VE6XC、楽器サウンドが鮮明で一音一音のリリースが速いタイプの音が大好物です。
MT3 PROはどうかと言うと高域を抑えた中域メインのリスニング系モデル。この辺りは同じドライバーを使用しているEN700PROに通ずるところがあり、ベースのボトムを支えている感が強くアッパーチューンをリズミカルに聴けるのはEM2よりMT3 PROでして、バンドサウンドを構成する楽器全て満遍なくクリアーに鳴らしてくれるのが強みです。fripSide "Luminize"のイントロ(多くのイヤホンでガン刺さり)も尖りを丸めてくれるので、長時間ぶっ続けで聴く分にはかなり使い勝手の良いモデルと思います。
ジャンルで言えば弦楽器を中心としたサントラ系、勢いに任せて突き進む歌詞なし電子音楽が楽しめます。Y's Ⅸ "FULL MOON CEREMONY"の転調混じりの低域がゾゾっときますし、ゼノブレイド2 "Drifting Soul"はヴァイオリンの一体感・余韻感も強く醸し出されており、オケ寄りサウンドもそれなりに気持ちよく聴けるのではないか、と感じております。ボーカルは近からずとも遠からずで定位良好で不満なし、感度も高すぎないのでホワイトノイズが気になる方も問題なく運用できるでしょう。
まとめ
総じてかなり良い。「8000円にしては、、」という枕言葉が付きがちですが、音の評価は価格で決まるものではないというのはそこそこ沼に陥った人なら分かるはず。
個人的に1万円前後のイヤホンで推すならば、まずIE40Proが別格、次いでfinal E3000、ZIRCO PEZZOあたりをチョイスするのですが、低価格帯で評価されがちなのって音場広めでゆったり聴けるモデルが多い気がします。MT3 PROはそれらとはベクトルが異なり、手軽に運用できる本格IEMモデルということで、別口で紹介できる引き出しが増えて嬉しい限り。今に始まったことではありませんが、低価格帯の良モデルが本当に増えているのでまだまだ発掘しがいがありますね。