いよいよ国内発表された"IER-Z1R"、待ち望んでいた方も多いのではないでしょうか。
確定価格は税抜で¥199,880とギリギリ20万を切るライン、税込で¥215,640となっております。
発売日は3/23(土)、予約は本日からスタートしており私の周りでも無試聴でオーダーという猛者が多数います。
私の信者力はそれほど高くはないのでまずはソニーストアに設置されたデモ機を聴いてみて判断したいところですが、ここで改めて"IER-Z1R"のスペックとSONYのハイエンドモデルへの考え方に関する考察でもしたいと思います。
スペック概要
SONYのイヤホン部門のフラグシップに相当するモデル。
5mmダイナミックドライバー、12mmダイナミックドライバー、BAドライバーを搭載したハイブリッドモデルで全てのドライバーが自社開発。設計から全てを自社で賄うことで細かな音質チューニングを実現できたとのこと。ダイナミックドライバーを2基搭載しているモデルはEmpire Ears "Legend X"や"Nemesis"がございますが、"IER-Z1R"では低域と高域にそれぞれダイナミックドライバーを割り当てているので、他のハイブリッドモデルとは音質傾向が全く違うと予想されます。
5mmダイナミックドライバーにはアルミニウムコーティングLCP(Liquid Crystal Polymer)を採用。外部磁気回路で駆動し、100kHzまでの再生が可能という。全体の再生周波数帯域は3Hz~100kHz。一般的に人間の可聴域はせいぜい20kHzですから100kHzという数値に大きな意味はありませんが、ここまで広大な周波数帯域を持つ機種は他には存在しません。
12mmのダイナミックドライバーには、軽量かつ高剛性のマグネシウム合金のドーム型振動板を採用。ドームの端には5mmドライバーでも採用されているアルミニウムコーティングが用いられているなど一貫性があります。
高域用のBAドライバーの振動板もマグネシウム合金製。銀コートの銅ボイスコイルと金メッキ端子を採用することで、駆動力を高めつつ微細な信号も忠実に再現できるなどのメリットがあります。
インナーハウジングもマグネシウム合金製で、内部に組まれる3つのドライバー配置は位相を整えつつ分離感を高められるように調整したとのこと。形状に関しては賛否ありますが、SONYが長年蓄積してきた耳形状のデータベースを活用し、長時間使用しても疲れないようにすることを優先したとされます。
形状としては先に発売した"IER-M7"/"IER-M9"と似通っており、使用されているBAドライバーや構造などの設計は共有されています。
材質に関して
振動板の材質は他社と差別化できる主要因であることから各社拘っており、有名どころだとHiFiMANはトポロジーダイヤフラムと呼ばれる幾何学模様をコーティングした振動板を採用しています。また筐体自体の材質も音質に大きく影響するため、例えばCampfire Audioは流体金属やセラミックなどを好んで使用していましたし、DITA Dreamは切削加工の難しいチタンを選択して一定の評価を得ることができました。
"IER-Z1R"では他メーカーがあまり使用していないマグネシウム合金とジルコニウム合金が採用されています。
マグネシウム合金は エレクトロンもしくはダウメタルとも呼ばれ非常に軽量な金属です。実用金属の中では最も軽く、それだけでなく強度も確保できるため、自動車部品や家電製品、コンピューター部品などで使われてきましたが、近年では金属が本来持っている放熱性や電磁波シールド性が注目され、薄型ノートパソコンや精密機器でも盛んに採用されています。さらに切削加工がしやすいのも特徴で、機械加工時間を短縮することで動力を節約し、工具にとっても優しい金属です。切削性に優れるアルミニウムよりも柔らかいため、常用金属として多用されているアルミの立場を脅かしています。
デメリットとしては耐腐蝕性が低く、水やアルコール、各種酸に反応してしまうため、真鍮や銅と同じように表面に錆が発生すしてしまいます。IER-Z1Rではどのような処理がなされているか現時点では不明ですが、外側のハウジングには用いられていないので問題ないでしょう。
ジルコニウム合金はジルカロイとも呼ばれるチタン族の金属です。ジルコニアも似ていますが、これは酸化ジルコニウムのことでジルコニアに付着した不純物を引き剥がす加工を経てジルコニウムになります。ジルコニア自体はそれほど高価な金属ではありませんが、酸化物を還元する処理に時間とコストが掛かる上、溶接が困難なので削り出しによる加工が必須になります。
イヤホンにジルコニアをパーツに採用したメーカーはCampfire Audioの"初代LYRA"やZERO AUDIO "ZIRCO NERO"が思い付きますが、ジルコニウムを採用したイヤホンはほとんど聞いたことがありません。(大昔だったらあるかも)
付属品
- リケーブル可能で銀メッキOFC導体を採用。
- 3.5mmケーブルと4.4mmバランス接続ケーブルも同梱。
- イヤーピースは6サイズのトリプルコンフォートイヤーピースと7サイズのハイブリッドイヤーピースを同梱。
Kinberのオプションケーブルも発売予定で、海外では先行予約限定でKinberケーブルがバンドルされるキャンペーンが行われていましたが、国内版では今のところそのような話はありません。
価格
国内価格は¥199,880(税抜)
"IER-M7"/"IER-M9"のレートがかなり安かったので、あわよくば17万くらいで出るかと期待したのですが、そう上手く事は運びませんでした。
発表当初の海外価格は13,990香港ドルで現レートで換算しても21万円前後となります。日本だけ特段安いという印象はありませんが、国によってはかなり割高と感じるところもあるので、この価格設定は悪くないと思います。(20万ならまだ手が出せるなという感覚を持っているのがまずおかしいですね笑)