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64 Audio

N8(ネイト)

64Audioは米国ワシントン州バンクーバーに本社を構えるカスタムIEMメーカー。価格帯としてはエントリーモデルはほとんどなく、20~30万のモデルが主体のハイブランドという位置付けです。世界で初めてイヤホンの筐体に「第二の鼓膜」と呼ばれる「専用モジュール」を搭載し、ミュージシャンの聴覚障害リスクを最小限に抑えることを目的としたカスタムIEMの開発をしました。(APEXテクノロジー)
また最近のモデルには"tiaテクノロジー"と呼ばれる技術も使用されているのも64Audioならではの特徴です。従来のイヤホン設計ではBAドライバーに音導管をつなぎこむことが前提にあり、音導管を通して音導孔から音を出すことが基本でした。"tiaテクノロジー"は、BAドライバーに音導管を使用することなくドライバーから発せられる音を直接、音導孔から放出し、鼓膜へ伝えることのできるチューブレス技術の一つです。音導管を使用しないメリットは多く、音導管内部で各ドライバーから発信された音が混ざったり、フィルターによる音が減衰することを無くすことができます。加えてtiaドライバーはBAドライバーの筐体一部を切り開くことでドライバー自体の共振を拝することができ、ドライバー本来の音を歪みなく耳へ届けることが可能となりました。
"N8"はベーシストであるNathan East氏のシグネチャーモデル。Low*1(DD)-Mid*6-Midhigh*1-tiaHigh*1の計9ドライバーを持つハイブリッド型です。ベーシストのシグネチャーモデルなので当然ベースの表現力が上手いのですが、それ以上に楽器の分解能とボーカルの艶やかさに驚きました。解像感が高いのは言うまでもなく、高域もスーッと伸びているのはtiaドライバーに拠るものと思います。
低域は音が放出された後の余韻が抑えめで、突き抜けていくチューニングが成されているという点でVE6X1にも通じます。あちらの方が全体的に乾いたサウンドでスピード感は段違いですが、低域の音質傾向はやや似ていると感じました。"N8"はピッキングでも指弾きでも後味の良いドスの聴いた低音が楽しめます。ピアノやオルガン、アコーディオンなどの鍵盤による低域は空間表現に直結する部分でもありますが、こちらの方がVE6X1より余韻に深みがあるのでバラードやジャズ調も心地よく聴かせてくれる良モデルです。
価格は¥240,700。ポタフェスやヘッドホン祭等のセールで4~5万程安くなる上、直販が可能なメーカーです。国内代理店を通さずオーダーできるのでGoogle翻訳レベルの英語のやり取りができれば直接オーダーを推奨します。

A12t

続いてBA12基を搭載した"A12t"。
tiaドライバー搭載、APEXテクノロジー採用と64Audioの有する技術が盛り込まれたマルチBAモデルです。イヤモニの出口となる音導孔の数はメーカーによって異なりますが、U12tでは大口径の孔を一つに絞るシングルボアを採用。音導孔自体がアコースティックチャンバーとなり、ドライバーの性能を引き出す設計となっています。
ドライバー構成としては"N8"の低域担当のDD*1基がBA*4基に置き換わったLow*4-Mid*6-Midhigh*1-tiaHigh*1という並び。中高域にドライバーが偏っていることもあり、中高域の解像感がズバ抜けています。Legend Xが支配感の強い低域と広すぎる音場を強みとするならば、こちらは中域の情報量と高域の伸びやかさに軍配が上がりますね。ボーカルも比較的近いのですが、A12tの場合あらゆる音を拾ってくれるので、全パート横並びで押し寄せてくる感覚です。全体的にシャキッとクリアに鳴らせるクール系で、それでいて楽器の繊細なタッチも表現できる万能型に仕上がっています。
分離感も比較的強めで、VE8程強烈ではない聴き疲れしないラインでまとめています。Apexモジュールの影響もあるでしょうが、ハイエンドの中では超高解像度で情報量が多すぎるにも関わらず、スッと鼓膜へ溶け込んでいく様は唯一無二の機種と言えるでしょう。
価格は¥263,800。ユニバーサルモデルも用意されておりそちらは型番がU12tとなります。カスタム版はアクリル、ユニバーサル版ではアルミニウム筐体なので材質違いによる音の変化は留意しておくとよいでしょう。
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FitEar

MH335DWSR

FitEarは日本を代表するプロ向けカスタムIEMブランド。メーカー名は須山歯研で、金属床義歯を中心とした歯科技工が本業でした。歯科技工の精密技術を活かして他の医療機器分野(補聴器)に事業拡大し、後に補聴器用イヤーモールドからインイヤーモニターに技術応用してFitEarが生まれました。カスタムIEMの一般ユースが広まったことで新製品開発にも力を入れています。
FitEarもエントリーモデルからハイエンドまで多岐にラインナップされているので最初の一台にオススメされる傾向にあるのですが、私の場合は4本目のカスタムIEMに"MH335DWSR"を選びました。
"MH335DWSR"は"MH335DW"という低域寄りのモニター系IEMのスタジオリファレンス版で、価格だけで言えば上から2番目に位置するモデルです。
音質面ではスピーディに駆け抜けていく低域のソリッド感と中域のみずみずしさが上手く混在している点が挙げられます。ベースやドラム等の低音楽器を筆頭に各楽器パートとボーカルの距離感が絶妙で、低音主体イヤホンにありがちな音像が曇ったりする事象が皆無なのが優秀なポイントです。ボーカルだけではなく楽器全般を分析的に聴きたい、かと言ってボーカルが引っ込んでいるのも困ると言うなれば、MH335DWSRは非常にオススメできる逸品で、低域ドライバーの増加及びチタンボアによる高域改善でトータルバランスに関しては向かうところ敵なしと言ったところ。ボーカルの艶やかさで言えば一つ下のMH334系統の方が向いていますが、特定の音楽ジャンルを絞らず万能に使えるモデルを探しているならばMH335DW系統の方が向いているかと思います。
価格は¥244,000、SRでない通常のMH335DWは¥179,900です。違いは周波数レンジが拡大され、中低域解像度の向上を目的にネットワークを最適化し、高音担当ユニットサウンドポートのチタンチューブが用いられている点。音質面でも若干異なるので聴き比べてみて下さい。
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Jomo Audio

Samba

Jomo Audioはシンガポール発のカスタムIEMメーカー。Jomoの由来はCEO-Joseph Mou-から。
当メーカーの現行フラグシップはBA11基を搭載し高域と低域をそれぞれ可変できるスイッチを2つ組まれた"Flamenco"、また本国では静電ドライバー、Dドライバー、BAドライバーを搭載したトリプルハイブリッドモデル"TRINITY"が発売されており日本では上陸待ちといった状況です。
SambaもかつてのフラグシップモデルでLow*2-Mid*2-High*4のBA8ドライバーを搭載。発売当時はアクリル筐体だったのですが、現行ではチタンチューブに切り替えたSambaIIが正式名称となっています。というのも当初ユニバーサルモデルには金属ステムが組み付けられており、カスタムモデルは金属を含まない通常のチューブだったため音質傾向がまるで別物でした。カスタム版もIEM出口に金属をつけることでユニバーサル版に音質傾向を近づけようとした経緯があります。
私が持っている実機版はチタンチューブでない初期Sambaのため現行モデルと若干傾向が異なる可能性が高いのですが、バラードなどゆったり目の曲調は凛とし綺麗目に、激しめなロックやクラブミュージックはパワフルに鳴らせます。公式ではモニター気質という紹介がなされていますが、全帯域を分析的に出力するタイプではなく、引くところは一歩引いて曲中の強調すべきポイントは強くメリハリがしっかりしたリスニング機と思います。Jomo Audioは全体的に高域が刺さる傾向にあるので向き不向きが明らかなメーカーなのですが、濃密なサウンドを求めるならば一度試聴してみて下さい。
価格は¥219,000。Jomo AudioもVision Earsと同じくeイヤホンが代理店です。そのためポタフェスで思い切った特価セールをすることがあるので安く入手するにはセールを狙うとよいでしょう。

参考記事

10万円以下のエントリーモデルのオススメはこちら。

(Unique Melody "MACBETH Custom"やFiR AUDIOの"M2"を近日中に追加します。)