また荒れそうなテーマを投下します。今回はIRIVER DAPの発売から現在に至るまでの価格の推移について客観視したいと思います。
今回チェック対象にした機種はフラグシップ+その直下に位置するセカンドモデルです。
2014年12月発売:AK240 BlueNote
2015年7月発売:AK380
2015年12月発売:AK320
2017年7月発売:SP1000
2018年6月発売:SE100
これらの発売直後から現在に至るまでの新品価格変化をまとめたものが下記グラフになります。販売店はその時々の価格情報を消していますが、購入者レビューや自身の記憶を元に作成しました。故に若干の増減はあるかと思いますが、傾向としては間違っていないかと存じます。各機種一つずつ見ていきましょうか。
AK240
彗星のように登場した弩級プライヤー、AK240が発売したのは2014年1月。ファースト29万円程でスタートしました。最初の半年は数万円程度の割引を重ねていきましたが、ターニングポイントは約1年半後の20万切り。最近のモデルと比べるとかなり頑張っていますが、同じくらいの価格で売り出されたSONY WM1Z が定価30万に対して2年以上経った今も26万程とそれ以上に価格を維持しています。最初からAK240の価格戦略は時間経過とともにガツンと下げて「ここまで下がるのか」とカスタマーに思わせ衝動的に買ってもらうことを数回繰り返すことだったと思われますね。20万切り→15万切り→10万前後で在庫も枯らして売り切りといった流れで、2016年夏頃に市場に出回っている大半は無くなりました。
AK240 Blue Note
AK240が登場した同じ年にBlue Note 75周年記念ということで、大量のジャズ音源を付属したBlue Note版が世界1000台限定で12月に発売。この時のお値段なんと78万円という理解不能の価格設定です。
Blue Noteとの大人の事情によるものかもしれませんが、いくらBlue Noteのハイレゾ音源が500曲弱入っているからと言ってそんな馬鹿げたプレイヤーを買う人はなかなかいなかったでしょう。(一人だけこれを後々の値引きなしで買った猛者を知っていますが) そもそもジャズファンは音源を持っているので付属品に価値を見出す可能性も低い中でこんな企画がよく通ったものと感心します。
どれほどの売れ行きかは知るところではありませんが、2016年9月にターニングポイントが訪れます。全く同じパッケージが20万まで値下がり。75%OFFという閉店セールでも中々見ない割引率です。この時の無印AK240は新品で15万程度でしたので、プラス5万でジャズ音源がついてくることを考えたらかなり有力な選択肢になり得ます。さらに2017年10月頃に保証交換用のパッケージが99,000で販売される大盤振る舞い。音源も全て収録されているので、ここまで下がってしまうともはやプレイヤーがおまけです。台数もさほど多くなかったことから、購入者が殺到しました。
AK380
AK240がそれなりに成功して、ハイエンドDAP市場をさらに高いラインに押し上げたのが第三世代。そのフラグシップに位置したAK380がAK240発売から1年半後の2015年7月に登場。ファースト価格は45万とAK240の1.5倍の価格帯です。拡張機材として専用AMPも後に登場しましたが、これも最初は10万くらいしていたんですよね。最終的には3万程度で投げ売りされていましたが。
AK380は価格もスゴいが音質性能も凄まじく、今でも愛用しているユーザーさんも多いと思います。しかしながら価格を釣り上げた上で、AK240の時と同じく時間経過とともに値下げ、値下げ、値下げの嵐が吹き荒れ、発売1年後の2016年夏には30万切り、2年後の2018年夏には半値以下、今年に入ってからはAMPとセットで20万、そしてつい最近は最終ストックが13万ほどで吐き出された様子で、最終的には70%OFFでその生涯を終えることとなります。
AK320
第三世代のセカンドグレードで、AK380の廉価版として2015年12月に登場。ファースト価格は23万でした。どこぞの販売店が言ってた「スタンダードモデル(標準)」で20万越えという金銭感覚の狂った表現に界隈は騒然。その後登場した10万くらいのAK300がエントリーなどと言われ、「スタンダードとかエントリーって何だっけ」と考えさせられたことはまだ記憶に新しいですよね。
AK320は同じく第三世代の旗艦モデルAK380とは音の方向性が異なるので、AK320の方が合うというユーザーさんもいるでしょう。AK320が発売された時点でのAK380の実勢価格は35万程度だったことを覚えているのですが、わずか半年足らずで10万もマイナスされている点に暴落速度が加速し始めた頃合いですね。AK320の方も発売直後から少しずつ下げていって、あっという間に20万切り、3ヶ月タームで1万円ずつ安くなっていき最終的には新品10万を切るところまで落ち込みました。割引率で60%OFF。
SP1000
世代交代したのは2017年7月。約2年の間、限定モデルの第三世代やAK70MKⅡ、KANN等でやりくりしていましたが、第四世代ではそれまでの冠であるAstell&Kernとは決別して、A&ultimaという新しい柱を掲げることになります。今年に入って分かったことですが、フラグシップラインのA&ultima、プレミアムラインのA&futura、スタンダードラインのA&normaの3本立てが第四世代の概要。SP1000はフラグシップに位置しており、銅筐体、ステンレス筐体の2種類のモデルを発売しました。ファースト価格はAK380と同じく45万。金属筐体なので大きくは下がらないと思っていましたが、第三世代の悪行が知れ渡ったのか新品で買う人が大幅に減ったことで値引きを余儀なくされます。ちょうど1年が経過した今では、だいたい30万前後(割引率にして33%OFF)、最近特定の量販店がゲリラ的に特価セールを行い、この時は27万+10%ポイントで実質的に25万まで落ち込みました。全体的に25万あたりまで下がるのも秒読みですね。
SE100
そして発売したばかりのSE100もついでに見ておきましょうか。こちらは第四世代のプレミアムラインA&futuraに属するモデルです。SP1000のワンランク下に位置していますが、AK380-AK320の関係と同じく音質傾向が異なるので単なる廉価版ではありません。
ファースト価格は22万、実際には20万を切るくらいでスタート。ここからどういう落ち込み方をするのか見ものですが、上位のSP1000と合わせて過去の価格変動からどう暴落していくか予想してみましょうか。
全体的に言えること
IRIVERを擁する国内代理店の売り方はとにかく最初ふっかけておいて売れ行きが悪ければ下げて下げてを繰り返すダッチオークションのような販売手法をとります。売れればそれでいいと考える典型ですね。最近では他のメーカーも割引率を高めに取るところも増えてきていますが、ここまで顕著に大暴落しているのはIRIVERくらいのものでしょう。
AK240Blue Noteは例外で、これは1年以上ほとんど売り上げられず、大量のパッケージを倉庫に置いておくならばいっそ現実的な価格で売り払ってしまえということで閉店セールのような割引率になりました。通常ラインのモデルでいきなり垂直的な値引きがかかることはまずないでしょう。
しかしながら傾向としては半年〜1年で3割減、2年で半値以下になることは第二世代から踏襲されており、ここで挙げたモデルだけでなくAK70やKANNも似たように下降していっています。オーディオにおいて定価など存在しない、こんな記事をまとめずとも皆さん知っていることですので今更感はありますけど、IRIVERは2年で半値、これはもっと知れ渡ってほしい。私はIRIVER第三世代をこよなく愛していますが、それは製品本体に対してのみで、売り方に賛同したことは一度たりともありません。それでも販社が変わらないならば最大限利用するまでと考えているので、気にいる物が出てきても納得するラインまで落ち込むまでは絶対に買わぬよう心がけています。(ポンと気にせず買えるくらいの財力があればいいよネ)
SP1000とSE100の今後
グラフで見ると分かりやすいのですが、これまで通り半年〜1年で3割減、2年で半値になるとすると
- SP1000は来年7月迄に25万程度。
- SE100は来年7月までに14万程度、秋のヘッドホン祭で16万あたりが現実的。
SE100はともかくSP1000は筐体にそれなりのコストが掛かっていると思われるので最終どうなるかは読めませんが、今後もなだらかに下がっていって20万前後で完全放出って流れになれば欲しい人は買ってくれそうです。金属筐体なので第三世代のアルミ筐体と同様に考えるのはちと苦しい気もしますけれど。
個人的にSE100は半値になったら購入してもいいかなと思うくらいには欲しいのですが、今プレイヤーを新調するにしてもQP2RやWM1Aといった良い選択肢がありますからね。後々大幅に安くなるならばそれからでも遅くはないと思います。価格推移のグラフを見て、思い留まってくれるオーディオファン(特に初心者の方)が一人でもいらっしゃれば幸いです。無論、「今欲しいんだ、価格は関係ないんだ」という方はそのまま自身の正義と信念を持って突っ走るとよいでしょう。