【この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。】

AKGと言えばヘッドホン分野で最高峰の評価を獲得している名ブランドですが、イヤホンの分野でも根強い人気を誇るアメリカの音響メーカーです。

ヘッドホンは1万円台のものから20万クラスまで、イヤホンだと1~3万くらいの価格帯のモデルが大半を占め、BA2基、DD1基の3wayハイブリッド型K3003(14万弱)がフラグシップの座に未だ君臨中。最近登場したN5005はそれよりも安価で、ワイヤレスモード有りと単なるハイエンドイヤホンではなくカスタマーの音楽鑑賞の環境の変化に合わせることで他メーカーとの差別化を図ったようですね。(一応Nシリーズのフラグシップという立ち位置では有ります。)

音質だけで言えばもっと良い機種はたくさんありますが、装着感や付属品、保証といった別要素も合わせて評価されているな〜と感じます。アンダー10万なら悪くない選択肢なので、N5005のスペック、仕様、拡張性、音質などを一挙まとめたいと思います。

仕様概要

  • ドライバー5基のハイブリッドモデル、低域にDD1基、中高域にBA4基の密閉4wayハイブリッド。
  • 周波数特性10Hz-40000Hz、感度99dB/mW、インピーダンス18Ω、音量は取りにくいタイプ。
  • Bluetoothバージョン4.1、A2DP v1.2, AVRCP v1.4, HFP v1.6, HSP v1.2、充電約2時間で約8時間再生。
  • 4種類のメカニカル・チューニング・フィルターを変えることで音質変化。
  • 付属ケーブル4種。φ2.5mmツイストバランスケーブル、φ3.5mmリモコン付ツイストバランスケーブル、 Bluetoothケーブル、AKG純正アップグレードケーブル(φ3.5mmストレート)

装着感・遮音性

装着感は良好ですが、ステムが短くイヤーピース次第でフィット感は大きく変わります。筐体自体が耳に合わないケースは少ないと思いますが、カナルカーブが急だったり、極端に左右差がない限りは問題ないレベルでしょう。

遮音性はイマイチ、可もなく不可もなしのレベル。筐体で蓋をするタイプではないのでイヤーピース次第です。クリスタルチップスやコンプライで若干遮音性は上げられますが、音質に影響してしまいます。シリコンチップである程度外音をシャットアウトできるならば、それに越したことはないかと思います。

付属ケーブル

デフォルトで4種類のケーブルが付属する大盤振る舞い。ワイヤレス用だけではなく、2.5mmバランスケーブルまで付属する豪華っぷりです。

  • φ2.5mmバランスケーブル
  • φ3.5mmリモコン付ケーブル
  • Bluetoothケーブル
  • φ3.5mmAKG純正アップグレードケーブル

メカニカル・チューニング・フィルタ

N5005の大きな特徴の一つ、N5005はワイヤレスだけが売りではありません。

メカニカル・チューニング・フィルタはSHURE SE846のようにノズルを変えることで音質を変化させる機構です。透過性の異なるフィルターにより、信号の電気的ロスを避けながら、アコースティックに音質のバランスを調整させます。用意されているノズルは全4種類。

  • REFERENCE SOUND→スタンダード
  • BASS BOOST→低域増強
  • MID HIGH BOOST→ボーカル前面
  • HIGH BOOST→高域強調

音質

試聴環境、DAPはAK380CP+CPAMP、音楽のジャンルはロック、エレクトロ、ポップス、ゲームサントラです。アーティストでいうと、Porter Robinson、Skrillex、Metallica、THE BACK HORN、UVERworld、絢香、ファルコム/植松伸夫/桜庭統/ACEなどなど。

フィルタによって音換えが可能なので、まずは最もスタンダードなREFERENCE SOUNDフィルタから試してみます。一言で言うならナチュラル。中低域に重みあり。高域は厳しく伸びやかさはあまり感じません。全く刺さらないので長時間の使用でも聴き疲れもしなさそう。

楽器の分離感もそれなりに大きく、単一楽器の解像感も高めです。低域はどっしり広く構えており音場も広め。勢いはないけれど、とりあえず無難。もうちょい迫力というかパンチ力が欲しいところ。

フィルタを変えてみます。ここからが本領発揮。最も印象が良かったのは高域強調のHIGH BOOSTフィルタでした。低域の沈み込みはREFERENCE SOUNDフィルタの時とほぼ同じ。中高域は際立って鮮やかになり、ボーカルはフォルタ変更前と比べてもう一歩前に、弦楽器や鍵盤の高域の上限が解放されたように伸びていきます。HIGH BOOSTにするならば付属のアップグレードケーブルに変えた方がBetter。サ行の刺さりやハイハットの超高音がキーンと耳にくるケースは少なかったです。イヤーピースによってフィット感が大きく異なりますので、もし刺さるならば低域が抜けてしまっているから高域が目立ってしまっているのかもしれません。それでも改善されないならもう一段高域を減衰させるMID HIGH BOOSTフィルタが良いでしょう。高域は抑えてボーカル域を強化するので、歌詞入りの曲ならばこちらの方が向いているかも。また低域についてはHIGH BOOSTでも必要十分でこれ以上バスバスくるとやかましく感じてしまいます。低音好きの方には間違いなく物足りないと感じると思いますのでBASS BOOSTフィルタ一択になりそう。

簡潔にまとめるとREFERENCE SOUNDはその名の通り最も中庸な音、やや面白みに欠けますが、解像感も十分高く、ジャンルを選ばず仕様できるのがこのフィルタ。BASS BOOSTは低域増強、MID HIGH BOOSTはボーカル強調、分離感アップ、HIGH BOOSTは高域強調しクリアさアップ。フィルタを変えるだけで結構味が変わるので、飽きたらフィルタ交換で4通りの音に変化させられるのはありがたいですね。

リケーブル

せっかくなのでワイヤレスも試してみましょう。リモコン付きのワイヤレスケーブルがついており、上質なハイブリッドサウンドを無線で聴くことができるのは大きなメリットです。

巷ではワイヤレスモードの音は不評の様ですが、そりゃあ有線と比べたら劣るのは当たり前で、全然許容範囲内。REFERENCE SOUNDだとただでさえ面白くない音が一層ぼやけてくるので、特徴を持たせるためにフィルタ交換は必須と感じます。

ただしワイヤレスのためだけに10万もするN5005を購入するのはオススメできません。1~2万クラスのもので完全無線の機種が増えてきていますから常時完全無線ならばそちらの方がコスト的に圧倒的に優れています。どうしても無線の音って限界がありますから10万出すなら3万の完全無線を買って残りで3万クラスの有線を2つ買った方が断然楽しめるのが個人的な意見。N5005は上質な有線サウンドを7割くらいのパワーでワイヤレスにすることもできるのが売りなので、私ならば屋内でじっくり聴き込む時は有線、屋外移動中はワイヤレスにケーブルを変えて使い分けすることになりそう。

価格・保証

定価で¥99,000、ギリギリ10万を割るところからスタート。中古もあまり出回っておらず、相場も7~8万程とCampfire Audio ANDROMEDAのように暴落することなく一定ラインで相場を維持することが推定されます。

メーカー保証は音響メーカーに指定は珍しく標準で2年間付与。多くのメーカーが1年しか保証しない中で、無条件で倍の期間保証してくれるのは製品に対する自信の表れと思います。

またカナダamazonではC$800ちょい(6万円中盤)で販売されています。保証も通常通り2年。税関での消費税が発生しても日本国内での中古相場同等となかなか悪くない価格。海外通販に抵抗のない方は直輸入するという選択肢もアリですね。

まとめ

装着感・遮音性 30/50

  1. 41-50:カスタムIEM相当、筐体が耳にマッチしており収まりも完璧。遮音性も高く、騒がしい店内でも大きくシャットアウトしてくれる。
  2. 31-40:カスタムレベルとまでいかないが装着していてストレスフリー、かつ遮音性も確保できている。
  3. 21-30:装着感は良好だが遮音性が伴っていない。イヤピによる調整必須、屋外用途でギリギリ使えるレベル。
  4. 11-20:装着できなくはないが、装着感もいまいちで遮音性も低い。
  5. 0-10:痛みを伴うレベルで筐体が合わず、装着できない。極めて絶望的。

音質 88/100(HIGH BOOST)

  1. 低域よりも中高域重視、低域は量より質、スピード感高めにカッチリ固めに鳴らしてほしい。
  2. ボーカルも楽器の一部、全楽器の音をバラして聴きたい、解像感高めは正義。
  3. クラシックやジャズを聴くわけではないので音場も重要ではないが余韻は欲しい、ライブ音源を気持ちよく聴きたい。

Aに関しては中域が前に高域もシャキッとするのが好感。どちらかといえばウォーム寄りで駆け抜けていくようなスピード感、パワフルさは持ち合わせていないので-4。

Bについては解像感、分離感は悪くはないけどDreamやVE5/VE6と比べると劣るので-4。比較対象が悪いのですが、普段使用している機種で耳が肥えているのでどうしてもマイナスポイントに。

Cについては音場広めでボーカル域が明るくなるのでライブ音源の空気感は◯。ややウォーム寄りの音だと必然的に余韻も強くなる傾向にあるのですが、RE2000の音場と比べてしまうと-4。

総合 81/100

30*1/2+88*3/4=81

あくまで相対評価なので比べてしまうとマイナス点は浮き彫りになってきますね。このN5005は音のバランスがいいことに加えて、充実した付属品、フィルタ変えによる拡張性、ワイヤレス化といったオプションがむしろ評価できるポイントなので、10万予算で付属品をフル活用する、というのであれば結構良い選択肢になるのではないかと思います。

Twitterでフォローしよう