final応援の意も込めて新製品のE1000を購入しました。
大まかには前回ヘッドホン祭で試聴した通りですが、実際購入して家でじっくり聴いてみると新たな発見が出てくるものです。とりあえず開封後ピンクノイズを50時間ほど流してエージングを施したので、改めてレビューしたいと思います。
以下常体。
E1000の仕様
周知の事実なので簡単に。
- final Eシリーズの最廉価モデル
- E2000/E3000の弟分で筐体材質違い
- E2000はアルミニウム、E3000はステンレス、E1000はプラスチック。
- 感度 102dB/mW、インピーダンス 16ΩでE2000と同等
- カラーラインナップはブラック、レッド、ブルーの3色
- 価格は約¥2,300、E3000の半分、 E2000の3分の2くらい
装着感
- 筐体が耳にマッチしており収まりも完璧。遮音性も高く、騒がしい店内でも大きくシャットアウトしてくれる。
- 装着していてストレスフリー、かつ遮音性もそれなりに確保できている。
- 装着感は比較的我慢できるが遮音性が伴っていない。イヤピによる調整必須、屋外用途でギリギリ使えるレベル。
- 装着できなくはないが、装着感もいまいちで遮音性も低い。
- 痛みを伴うレベルで筐体が合わず、装着できない。極めて絶望的。
個人的にはこのシリーズの形状はイマイチなので購入しても十中八九使わなくなることが目に見えているが、¥2,000ちょっとだったらお布施の意味で投げてもいいかなと思ったので試しに手に取ってみた。たまにはこういう買い物も悪くない。
筐体形状が上位モデルE2000~E5000と同等なのでそれらとフィット感はほぼ同じ。耳奥に筐体ごと押し込むように装着する。イヤーピース調整は割とシビアで、イヤピが大きいと外側に押し出されてしまうため、気持ち小さめを選んだ方がいいかも。遮音性についてはカナルがストレートならばそこそこ確保できると思うが、カーブがキツいとどう頑張っても隙間が生まれるので外で使うには適さない。
一度地下鉄(朝のラッシュ時)で使ってみたところ、轟音に抗って音量をかなり上げて聴いていたら、隣のおっさんに肩をトントンされ「やかましい」の一言を食らった。E1000に限ったことではないがEシリーズは装着感がイマイチだと音漏れも大きいかもしれない。
音質
まずは前回同様に無印AK380で試してみる。
相変わらず音量は取り辛く、AMPなしで75/150、AMP込で50/150くらい。RE2000やDreamと同等のボリューム感で、駆動力の乏しいDAPだとE1000の良さを認知できずに終わってしまう可能性をはらむ。
E2000やE3000の廉価版という立ち位置ではあるが、音質傾向はまるで異なる。感触としては試聴時のレビュー通りだが、低域の出力が若干増した気がする。ベースの主張が強くなり、テンポの速い曲調だとやかましく聴こえる場面もある。この低域を許容できるか否かで「期待はずれ」と捉えるか「スゴいエントリーモデル」と捉えるか二分化している感じ。流石に2000円ちょいのモデルにハイエンドダイナミックのような低域を望むことはできないので個人的には全然許容できる。
DAP側が変われば印象も変わるので、AK380SSに切り替えてみる。AK380シリーズの中で一番好きなのはこのSSなのだが、低域が締まり中高域がやや硬質に。ボーカルは無印時とあまり変わらず遠からず近からずだが、聴いてて楽しいのは断然女性ボーカル。男声より女声の方がトーンの変化を感じられノリ良く聴ける。上位モデル(E2000/E3000)よりもE1000がばっちりハマるという人がいても何らおかしくはないクオリティで、コストを抑えつつも上位モデルと棲み分けできるナンバーを新たに作れるfinalの心意気に感服する。E1000を皮切りに上位モデルも気になってしまう(沼にはまってしまう)人が多数現れても自然なことと思う。
常体解除
まとめ
S'Next社長のコメントを抜粋すると
「中学生のE2000ユーザーの方から、『友達に勧めたけど“高い”と言われてしまった』との声をもらいハッとした。E2000が今実売4,000円くらいでエントリー機だと我々は考えていたが、自分が中学生だったころを考えればたしかに4,000円は手軽に買える値段ではないと気づいた。それでいてクオリティには妥協したくない。Eシリーズとしての考え方はしっかりと踏襲したいと考えた」
今でこそ4000~5000円なんて飲み会1回行かなければ用意できる価格じゃねーか、と思ってしまうふしだらな自分がいますが、この発言を受けて「確かに月数千円しかお小遣いのない中高生に5000円はキツいよな…」と認識を改めさせられました。
開発のきっかけの一つが中高生のお財布事情だったことは公式見解ではありますが、実際に聴いてみるとE1000は中学生向けに作られたものではなく、Eシリーズとしての統一性を確保しつつ、限られた予算の中で最大限のクオリティを発揮させるために頑張ったんだなということがひしひし伝わる良モデルです。ハイエンドを複数持っている沼の深淵に潜む方も是非とも手にとって聴いてみて下さい。私は想定の三倍気に入りました。