2019年初レビューはCampfire Audio "SOLARIS"を題材とします。
ヘッドホン祭直後にもファーストインプレッションとして軽く書いたのですが、その時は「それほど絶賛されるものなのか?」っていう印象が強く、残念ながら個人的にはあまりヒットしませんでしたが、所詮一回聴いただけで全てを判断することはできないので、二回目の試聴で印象がガラッと変わることも多々あります。早速まとめたいと思います。
仕様
現行では唯一のハイブリッド型でDD*1基-BA*3基の計4ドライバー。
当初MixWaveのサイトではDD*2基-BA*4基の計5ドライバーと表記されていましたが現在は修正されています。
ダイナミックドライバーはATLASで採用されたA.D.L.Cコーティングを施した独自ドライバーを採用。限定カスタムモデル"Equinox"にも同様のドライバーをチューニング調整して採用されています。BAには音導管を使用しない独自の「Tuned Acoustic Expansion Chamber」を採用されているのは過去の一部BAモデルと同じですね。
材質はフェイスプレートには24kゴールド、中央部にガンメタルPVD、ノズル側にステンレススチール素材を採用。筐体形状もこれまでのモデルと全く別のデザインとなっています。
付属ケーブルは純銅銀メッキのSuper Litz線で、これまでのANDROMEDAやATLASに付いてくるケーブルとは異なります。
装着感
- 筐体が耳にマッチしており収まりも完璧。遮音性も高く、騒がしい店内でも大きくシャットアウトしてくれる。
- 装着していてストレスフリー、かつ遮音性も確保できている。
- 装着感は良好だが遮音性が伴っていない。イヤピによる調整必須、屋外用途でギリギリ使えるレベル。
- 装着できなくはないが、装着感もいまいちで遮音性も低い。
- 痛みを伴うレベルで筐体が合わず、装着できない。極めて絶望的。
Campfire Audioの筐体は
- LYRA/VEGAタイプ
- ORION/ANDROMEDAタイプ
- COMET/ATLASタイプ
- SOLARISタイプ
の4系統に分類できますが、個人的に今回のSOLARISタイプのフィッティングはイマイチでした。
一番良いのはCOMET/ATLASタイプ、次いでLYRA/VEGAタイプ、この2種類は遮音性が若干低いのが気になるもののユニバ機の装着感としては文句ありません。
ORION/ANDROMEDAタイプはイヤーピース次第で装着感が大きく変わりますが、工夫次第では問題なし。実際"ANDROMEDA S"は問題なく使用できているので角ばったデザインとは言っても痛みを伴うものではありません。
SOLARISタイプはこれまでのモデルとは違い、ノズルが太く長いためハウジングが耳から出っ張る形で装着することになります。JH Audioのモデルが合わない私にとってはそれに近しい感覚でした。もちろんSOLARISタイプが一番フィットするという方もいらっしゃると思いますが、Campfireモデルの中でも特に「人を選ぶ」のは間違いないかと思います。
フィッティング周りの印象は前回同様しっくりこないというのは変わらず、イヤーピースをあれこれ変えてみても改善しませんでした。
音質
使用 DAPはAK380SS+SSAMP。
Campfire Audioあるあるですが、能率が非常に良いので音量は小さくて済みますね。ANDROMEDAほどホワイトノイズが強くないものの、DAPやアンプとの相性が大きく影響するタイプと思われます。AMP込だと少し音量を上げただけで爆音になってしまうので直挿しで十分音量を取ることができました。
ATLASと同じ径のドライバーを使っているだけあってベースの唸りはパワフルで主張が激しい低音。ボーカルはパワフルで前へ前へ出てきます。ヘッドホン祭で試聴した際は、中高域が前へ前へ突き進んでいき低域が置き去りになってしまい帯域バランスがちぐはぐな印象を受けたのですが、エージングによって低域がほぐされ勢い付いたのか前回試聴した個体の帯域バランスとまるで違います。
これまでのCAでは聴かれなかったサウンドで、ストレートに音を伝えてくるタイプ。ANDROMEDAよりもATLASの空気感に若干近い印象を抱きました。総合すると全く別物ではあるのですが中域の濃密さはやや似通っています。高域のキラキラ感はあまり感じられず、無印のANDROMEDAの音が好きな人には合わなさそうです。"ATLAS"の濃密さとも"ANDROMEDA S"の落ち着いた中低域とも違って、楽器の音色を鋭く聴かせてくれるため、若干聴き疲れするかもしれません。
解像感は高いのは当たり前で、音場はCampfireにしては広め。ダイナミックドライバーの影響と思われます。楽器の分離感はそれほど強いタイプではありませんが、弦楽器全般に関しては相当解されていると感じました。スラッシュメタルなんかのエレキがギンギンな曲の高域がややキツめなので、一概に中低域寄りのチューニングとは言い難く、曲のジャンルや楽器構成によって高音が伸びるケースもあるだろうし逆に低域に偏るケースも起こり得るでしょう。
"ATLAS"だと中低域の濃密さとベースの主張が強いのですがSOLARISでは弦楽器の鋭さも性質として加わります。"ANDROMEDA"のようなキラキラ感は抑えめではありますが、シャキッと目の醒める高域とスピード感のある重厚な低域はCampfireの理念を体現したようなバランス感覚で、これまでのモデルと傾向が似ているものはありませんがCampfireらしいと言われれば納得のクオリティに仕上がっていると思います。
価格
国内定価¥179,463、ほぼ18万円でCampfire Audioの最高価格更新。
現地価格は"Equinox"と同じ$1,499。ALO Audio経由で買うにしても送料+通関消費税でトントンかそれより高くなるので、セールを狙うのが一番良さそうですね。
まとめ
一つだけ指摘したい事がありまして、以前 Twitterでも呟いたのですが、「これまでの集大成」って謳い文句で各ショップが売りに出してるのは違和感を感じます。個人的には"ANDROMEDA"の方が個性が強いと思いますし、ATLASの濃密さも捨てがたいし、"ANDROMEDA S"の煌びやかさと低音のバランスの良さもウットリしてしまう。"SOLARIS"は集大成と言うよりかはCampfireの新たな柱のようなイメージなのでこれまでのモデルが霞むようなものでは決してなく、"全ての上位互換"のような都合の良いレビュー、謳い文句に惑わされず、全て横並びに比較してみることが重要と思います。
私は装着感さえ合えば買っていただろうと思うとちょっぴり悔しくもありますが、散財を回避できたと考えれば悪くないかもしれませんね。