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CHEANEY(チーニー)と言うとどんなイメージをお持ちでしょうか。革靴にハマり、各国のブランドに詳しくなった方はまず第一に「あぁChurch’sの子会社ね」と思われたでしょう。
ブランドとしてはここ最近、種々の方策から注目されるようになっていますが、それでもチーニーは”廉価版チャーチ”という風潮があるように思えてなりません。私はそれに異を唱えたい。歴史的な成り立ちとチャーチとの深い関係性からチーニーがどのようなシューメーカーであるかお伝えします。

歴史

「CHEANEYはChurch’sが新たに作ったブランド」と勘違いされる人がいる。答えはNoだ。
1886年、英国革靴の聖地”ノーサンプトン”のシューメーカーB.Rileyで工場長を経験したJoseph Cheaney(ジョセフチーニー)氏が同地で創業したのが始まりだ。当時の名称は、”J.Cheaney,Boot&Shoemakers(ジョセフチーニー ブーツ&シューメーカー)”。
現在では確かに”Church’s”の子会社だが、その実130年以上の歴史のあるシューメーカであることをまず頭に入れてほしい。
ちなみに”Church’s”は”CHEANEY”よりも約10年早く1873年に創業している。
その後、1890年に彼の長男のAether Cheaney(アーサーチーニー)が、1903年に次男のHarold Cheaney(ハロルドチーニー)が入社し、このタイミングで"J.Cheaney&Sons(ジョセフチーニー&サンズ)"に社名変更した。

CHEANEYに限った話ではないが、当時の生産体制は、各工程に特化した、自宅の庭にある離れなどの場所(ショップ)で工程毎に作業を行なっていた。複数のショップを経て完成し集荷所に集められ出荷されていくが、それでも半径数十キロレベルの身近な地域に供給されるだけだった。激動の19世紀~20世紀、多くのメーカーは需要拡大のために生産体制を見直すことを始める。

CHEANEY は1896年に生産工場を現在の場所に移転。
この新工場移転により、「革カット⇒縫製⇒ポリッシング⇒検品」と原材料から完成品に至るまで全ての行程を一括管理できるスタイルを確立した。こうした動きもあり1900年代初頭からシューメーカーとして飛躍的な成長を遂げる。
そして第2次世界大戦後、創業者の孫”Dick Cheaney(ディックチーニー)”は海外への供給を展開し、シューメーカーとしての確固たる地位を築いていった。
1966年には、英国で最も栄誉ある賞の一つであるQueen’s Award賞を輸出部門で受賞するが、この直後にChurch’sに買収される。
ここからCHEANEYはChurch’sの弟分のような存在として認知されていく。
買収された後、“Cheaney of Englandとして1967年から自社ブランドの販売をスタート。自社で在庫を抱え販売するスタイルを開始し、地元ノーサンプトンでで成長する。1980年代中頃までには、「自社製品販売」と「他社OEM生産」という2本柱を確立させた。
1991年より渡辺産業を輸入代理店として、専門店やセレクトショップで提供開始されるが
1997年に、イタリアミラノの総合ブランドPRADA(プラダ)により、親会社のChurch’sごと買収される。
その後、2002年ロンドンに旗艦店をオープン、ブランドの認知度は一層増したが
2009年にChurch’sの元取締役のJonathan Church(ジョナサン・チャーチ)氏と従兄弟のWilliam Church(ウィリアム・チャーチ)氏がPRADAファミリーから”CHEANEY”を買収。
Church’s創業家純血2名がトップに加わり、CHEANEY SHOES LIMITED(チーニーシューズリミテッド)と社名を変えて再出発
”CHEANEY”にとっては計3回買収されたことになるが、約50年ぶりに独立を果たした。
1886年創業時と同様に、カッティングからファイナルポリッシュまでのすべての工程をノーザンプトン州で行い、英国伝統のグッドイヤーウェルト製法で、熟練職人による一貫生産にこだわり、「純英国製」を貫いている。

一概に元子会社ブランドだからと言って品質が劣るとかそんなことは決してなく、
むしろ現在ではChurch’sはPRADAの息が掛かっていますから、本来のChurch’s家が経営する”CHEANEY”の方が古き良きChurch’sらしさを感じられるのではないか。
Church’sもChurch’sでPRADAファミリー加入後は賛否があり、加入前のオールドChurch’sじゃないと認めない人もいるくらいですから、目で見て、履いてみて良い靴だと感じられればそれで良いと思います。

というわけで現在のCHEANEYを要約すると、「Church’s創業家が経営する独立メーカーで、伝統的なスタンダードと現代風なエッセンスを融合させた新しい靴を作り出す魅力的なブランド」ということです。

シューメーカーとしての特徴

比率としては全体の4割が他社のOEM生産で、多くのメーカーやセレクトショップに認められ技術と品質を保持している。
世界中の有名なアパレルブランドに供給されており、日本国内ならばBEAMS(BEAMS)、TOMORROWLAND(トゥモローランド)、UNITED ARROWS(ユナイテッドアローズ)、EDIFICE(エディフィス)といったセレクトショップの別注モデルを手掛けている。

価格帯

Church'sより比較的安価で、5〜8万円が主要モデルとなっている。Church's主要モデルはだいたい9万〜12万くらい。
5年ほど前までは4万円後半で買えていたのだが、2017年に入ってから革の高騰を理由に値上げをした様子。
ストレートチップALFRED(アルフレッド)や外羽根パンチドキャップトゥのASTWELL(アストウェル)が約64,000円ほど。
CHEANEYは内外価格差が小さいと言われていたが、現在はそんなことはなく関税を見込んでも本国から取り寄せた方が若干安くなります。
一足あたりの工程数は160程でChurch’sと同等。価格差はハンドで行う工程数と革質の違いから。
CHEANEYの革も最高級とまではいかずとも、上質なものを使っているので、安いからといって粗悪品でないことは確かです。

定番ラスト

125 LAST(Classic Collection)

125周年を迎えたCHEANEYが新たに開発したラスト。 日本人を含めた現代人の足を考え抜いて作られたこのラストは、以前よりも細見のフィットを採用し、ヒール部分を小ぶりにすることで現代人の足によりフィットする構造になっている。 スマートな表情を取り入れつつも、バランスのとれた丸みのあるトゥで伝統的なクラシック感を残しているのが特徴。 

11028 LAST

ロングノーズでオーバルトゥなエレガントな風貌が特徴で、シンプルなプレーントゥから華やかなブローグシューズまで幅広く採用される。ウィズは広すぎず狭すぎずゆったりとした履き心地で、小さめのヒールカップも日本人の踵にフィットしやすい。

1886 LAST(1886 Collection)

創業年を冠にしたCHEANEYの定番ラスト。長すぎず、短すぎない絶妙なラウンドノーズと、英国の伝統的な丸みのあるラウンドトゥ。 ややゆとりがあるボールジョイントは、幅広な日本人の足に馴染みやすいラストです。 また土踏まずを絞る事で足を支えるフッティングになっているのが特徴。

12508 LAST(Country Collection)

イギリスだけでなく、イタリア、フランス、ドイツ、ベルギーなど世界的にもベストセラーのラスト。ノーズは短め、ウィズは広めのぼってりした見た目でカントリーシューズに採用される。丸みがあり無骨なフォルムながらも昨今のトレンドにも合致している。カントリーコレクションの名の通りまさに“ブリティッシュ・カントリー”。ビジネスの代表的ラストが#125ならカジュアルの代表ラストが#12508と言える。

4436 LAST(Country Collection)

英国軍に供給していたこともあり本国ではミリタリーラストとも呼ばれている。CHEANEYの現行品番で最も古く歴史があるラスト。このラストで表現されるインラインモデルは全て"ヴェルトショーン仕様"と非常に手の込んだつくり。ヴェルトショーンとは表革をウェルトの上側に縫い付ける仕様で、ウェルトと表革の隙間がなくすことができる。 熟練の職人と専用マシーンを必要とするため1週間に24足しか生産できない。

11028 LAST(City Collection)

適度なノーズの長さと、ラウンドトゥの組み合わせが特徴の#11028 LASTを使用する事により、モダンでドレッシーな印象を与える。 定番モデルの125LASTや1886LASTに比べるとやや幅広なウィズのため、 幅広な足の人が多いといわれている日本人の足にも合いやすい。

最高級ラインImperial Collection(インペリアルコレクション)

歴史の項でお話しましたが、2009年にCHEANEYは元Church's経営層だったJonathan ChurchとWilliam Churchの二人により独立を果たします。この二人の主導で、2010年、CHEANEYの技術の粋を極めた最高級ラインとして"Imperial Collection(インペリアルコレクション)"を世に送り出しました。

高級靴として、デザイン・履き心地・革質は申し分ないのですが、加えてアウトソールがフィドルバッグなのが特徴。ビスポーク靴に採用される手法で、既存モデルとは画一されたものを作ろうという意思を感じさせます。モデルは"ストレートチップ"と"ダブルモンクストラップ"の2種類のみ。

現在国内で取り扱いがなく本国から取り寄せる必要がありますが、それでも£455と高級靴の中でも超破格です。

輸入して税金を加味しても、£455*150(¥/£)+£455*0.6*0.3≒¥80,000と、かなり惹かれます。

正直見ていて欲しくなってきました…私だったら今のChurch'sのメインモデルを買うなら、断然こっちを選びます。

130th Anniversary Collection

昨年2016年秋に創業130周年を記念してアニバーサリーコレクションが登場しました。用意されたモデルは、"プレーントゥ"WELLAND(ウェランド)、"フルブローグ"RUSHTON(ラッシュトン)"ウイングチップ"REGENT(リージェント)の3種類。

ラストも125ラストを改良した130ラストを開発し、この3モデルに採用されています。ポールジョイント部がやや小さくトゥに丸みを帯びせており125ラストよりもスマートな印象です。ウエストもなだらかにシェイプされ細く絞られ土踏まずをキュッと締めるフォルムになりました。

より細身になったので多くの日本人の足には合いにくいかもしれませんが、最新モデルなので紹介しておきます。

まずこの記念モデルならではの特徴は、付属品が盛り沢山&豪華すぎるということ。130周年記念ロゴをあしらった特製ボックス&シューバッグ、アッパー用ブラシ、コバ用ブラシ、ポリッシュワックスというお手入れ3点セットが付属。さらにはCHEANEY純正の木製シューキーパーもセットになっています。

130周年記念ロゴは、ヒールソックにはシルバーカラーでプリントされ、アウトソールには土踏まず部分に刻まれた「Made in England」の下に「130th ANNIVERSARY」の文字。さらにライニングとアウトソールがブリティッシュグリーンと色違いになっているのも特別感に駆られます。

加えて各モデルも既存のスタイルに少し手が加えられており、"プレーントゥ"、"ブローグ"といった見た目は同じだけども意匠が異なります。

  • 羽根の部分が通常のシングルステッチからダブルステッチに変更。
  • コバのエッジには通常よりも細かいウィーリングが入る。
  • セミブローグ"RUSHTON"だけはブラックとモカバーニッシュの二色展開。他二モデルはブラックのみ。

国内ではこのセットが残っているかどうか定かではありませんが、靴だけであれば本国から取り寄せ可能です。

まとめ

というわけ現在のCHEANEYは廉価なChurch'sもどきのブランドではありません。セレクトショップの別注を手がけていることからそのような安いイメージを抱きがちなのですが、インラインモデルは元Church'sのお二人が来てから様変わりしています。

伝統を大切にしつつも移り変わりの激しいファッションの流行を取り入れようと改良し続ける姿勢はどのシューメーカーよりも突出しているので、もっとこの部分を押し出したらいいのにと個人的には思います。

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