MEERMIN(メルミン)というブランドをご存知でしょうか。最近知名度が高まりつつある革靴メーカーで、価格に対する品質が高くにわかに話題になっているスペインのブランドです。
もともとスペインはヨーロッパの中でイギリスに次ぐ第二位の靴生産量を誇る靴大国の一つです。特に知名度の高いメーカーは"MAGNANNI(マグナーニ)"と"YANKO(ヤンコ)"。アパレルのZARA(ザラ)もスペインで多くのファッションデザイナーを輩出している国です。革靴に限って言えばイギリスの影に隠れがちですが、お求め易くて品質の伴ったものを作るブランドが多いのです。
MEERMINは2002年、ホセ・アルバラデホ・ラミス氏が創業した比較的新しい革靴ブランドです。日本でいうと"三陽山長"もそれくらいですね。まだ20周年にも達していないと侮る方もいると思います。しかしながら創業者の経歴を知るとものスゴく深い歴史があるブランドと分かりますよ。
実はホセ・アルバラデホ・ラミス氏は"YANKO"の創業者であるホセ・アルバラデホ・プハーダス氏の息子です。ラミス氏自身も長らくYANKOに属していました。YANKOの歴史に関わるのですが、アルバラデホ一族が1897年同族企業として靴の製造を細々と受注して、ブランド化しようとYANKOを創業したのが1961年。この当時から原材料の製造・調達・設計開発・製造・販売までの流れを一貫した生産方式に拘り、ソールもラストも自社開発という徹底ぶりです。1980年に入ると年間100万足の靴を生産するレベルに達しヨーロッパ最大手レベルのメーカーに成長しました。
1998年にひと騒動起きることになり、創業者でCEOだったプハーダス氏が「もっと質の高い靴を作りたい」という想いをYANKO社内全体にぶつけます。しかしながら大きくなりすぎたYANKO内でその意見を通すことが難しく、経営層の中で対立してしまうことになりました。プハーダス氏の靴に対する想いは並々ではなく、「それなら自分は辞めてやりたいことをやるよ」とYANKOを去ります。この後CEOに就任したのがプハーダス氏の息子であるラミス氏なのです。ラミス氏もラミス氏で父親譲りの革靴への拘りがありました。理念の食い違いによりラミス氏も2002年に父親に続いてYANKOを抜けることになり、その後ラミス氏が立ち上げたブランドが"MEERMIN"というわけです。正式名称は"Meermin Mallorca Shoes"。
ちなみにプハーダス氏は"CARMINA(カルミナ)"というブランドを立ち上げ、YANKOはラミス氏が去った後もアルバラデホ一族が取り仕切っています。
ラミス氏はMEERMINを立ち上げる前に世界中のタンナーを巡り回りました。タンナーとは動物の皮を製品に使用できるように革に変換する職業のことです。皮革を研究し尽くし十分な知識を身につけた上でブランドを立ち上げたことで高品質の革を使って手に取ってもらいやすい価格の靴の開発に励んでいます。素材はカーフのみならずコードバン、アリゲーター等の希少な素材も扱っています。ラストも自社で削り出して生産しておりYANKO時代からの一貫生産はMEERMINにも生きているのです。
価格帯は5万円前後のものが多く、普段1~2万円の革靴を使っているメンズからすればそれでもちょっとお高いと感じてしまうかもしれませんが、この品質で5万ならお得感というか有名どころは毎年のように値上がり値上がりで、軒並み"ブランド料"が乗せられ手の届かない価格になっています。このようなメーカーのミドルグレードを取るくらいなら、知名度は低いけれど職人の拘りがハンパじゃないブランドを選んだ方がよくないですか?見栄を張れるというのも重要ですが、有名なメーカーより安いからという理由で選択肢から排除するのはあまりに勿体ないと個人的には思います。
また革靴のみならずベルトや財布、キーケース、名刺入れといったレザークラフトも製造しており、これらは高くても1万円後半とコスパに優れており、質の高い素材を求めるならば間違いなくオススメできるメーカーです。