中古革靴というジャンル、実は販売する側からすれば激アツな市場なんです。一昔前なら副業として結構稼げたのですが、今は競合が多すぎてダメですね。実際中古の革靴を購入される方も増えてきていますが、買って後悔する人が後を絶ちません。今回は革靴を中古で購入する前に知っておくべきデメリットを要点を中心にまとめたいと思います。良い面もあるのでまずはメリットからお話ししましょう。
目次
中古革靴のメリットまとめ
偽物の危険性が少ない
どんな市場にも言えるコトですが贋物の存在は本当に厄介です。元手が安く、プレミアになり得るものは全て偽物があると考えて間違いありません。
革靴という市場は、多くの人(特にメンズ)にとって必需品であり嗜好品です。ピンからキリまでありますが、いずれにせよ高い技術が求められます。同じ革製品でもカバンや財布と違って、ロゴなど関係なく技術の差が価格に反映されやすいのが救いですね。
ブランド力のある名だたるシューメーカーの多くが採用する製法はグッドイヤーウェルテッド製法、ノルウェージャン製法、ハンドソーンウェルテッドなどなど一足の靴を製造するための工程が200工程にも及ぶものばかり。いずれもアウトソールを確認すれば手が込んでいるかどうかは素人でも一発で判断できます。基本的に「手縫い」が原則ですのでとてもとても量産に向いていません。アッパーとソールを接着剤で貼り付けるセメンテッドならば大量量産に向いていますが、そのような靴にブランド価値はないので、偽物業者にとってもメリットがない、というわけです。
完全に偽物はない、と言い切ることはできませんが、こと革靴に関しては良い製品は古くから歴史あるメーカーが手がけてきているので、外見の特徴が把握できればある程度信用できると思っています。
ただし同じ靴でも「スニーカー」は偽物だらけです。中古品の9割は偽物なんじゃないかな。シュプリームやオフホワイトなどのプレミアコラボスニーカーは発売日前の抽選から争奪戦が始まっているように、需要と供給のバランスが異常なジャンルですのでくれぐれも中古スニーカーは買わないようにして下さい。これに関しては外箱やタグ、レシートなど全てを偽造してくるので、評価の高い出品者であっても油断なりません。
相場が大体決まっている
革靴の中古の定義は様々ですが、一度でも外で履いたら中古落ちです。新品の価値はもちろん、新古品と言うこともできません。一度でも履いたら価値は落ちるものです。「試着はどうなるのか」という話になりますが、そのあたりは暗黙の了解で、軽微な室内履きは価値が落ちにくいですね。
要するに店頭から購入した時点で、どのように使用しているかはその所有者に委ねられるので、個人出品者が新品と言って購入価格と同等で売りに出しても、買い手からすれば「同じ値段なら店で買うわ」となるのは目に見えています。実際に使用していない新古品も若干安くならないと売れませんし、もっと状態の悪いものならガツンと相場が下がるのです。
おおよその目安は
- 新古品(未使用相当):定価の70~80%
- 中古(状態良し):定価の40~60%
- 中古(状態悪し):定価の30~40%
- 中古(ボロボロ):ブランド靴でもせいぜい20%
大体どんなブランドもこんなもんです。あまり使用感のない中古靴がヒットすればめちゃくちゃお買い得だと思いませんか?がっつり履かれている状態の良くない中古靴はそれよりも安いけれど、インソールのコルクが完全に沈み込んでしまいラスト関係なく前所有者の足型で固定されてしまってることもあります。そういう中古靴はハズレ靴なのでいくら安くても手を出さないようにしましょう。
もっともこの部分は入手してから判断できることで、後述するデメリットを全てクリアした上で判明する結果論です。価格だけで判断すると「安物買いの銭失い」となりますのでご注意を。
リセールバリューの高さ
思っている以上に中古靴は売れているという話なんですけれど、仮にヤフオクやメルカリなどで入手した革靴が合わなかったとしても、同じように中古市場に放流すれば価格設定され間違ってなければ売れるのです。履けないものを手元に残しておいても仕方ありませんから、合わないもんは合わないとして潔く即売却しましょう。若干高く売れることもあれば手数料分損することもしばしば。そこそこ値がつきそうな状態の良いものは人が集まるので、これで稼ごうと思わない方が無難です。競合が多すぎます。あくまでサイズ感が合わなかったり、前所有者の足型があまりにも自分の足型とかけ離れている場合の保険として、相場以上に設定されている靴は選ばないようにするとよいでしょう。
中古革靴のデメリット
手に取って状態を確認できない
コメ兵などのリサイクルショップで中古靴が販売されていることもありますが、市場の大半はオークションやメルカリです。
個人から購入するのが一番お得なので、リサイクルショップの実店舗や業者と判断できる通販は回避するのが大前提です。ヤフオクやメルカリにも業者は存在しますが出品数や履歴が明らかに個人の範疇を超えているのですぐ見分けがつきます。
対個人の取引となるのでどこまで状態を開示してくれるかは出品者次第ですが、手にとって見ることも試着もできないので納得するまで質問攻めにすることが大切です。基本的に個人取引においては購入する=製品状態に納得したということの他ならないので、手元に届いて「思ってたのと違ったから返品云々」というのは通用しません。気に食わなかったら自分も横流しにすればいい話なので、相場を外れた価格帯の中古品を個人から購入しないようにしましょう。
経年劣化が判別しにくい
状態について自身が納得するまで質問することは当然なのですが、革靴はどうしても経年劣化するものです。特にアッパーとインソールの傷や劣化についてはくどいくらい確認しましょう。光の加減でも印象が大きく変わってしまうため、あえて照明を当てないで撮った写真を要求することも参考になるでしょう。
コードバンはたとえ使用時間が長くとも、頻繁に手入れされていれば新品では絶対に出せない雰囲気を醸し出してくれるのですが、手入れもされず、履き古されているものは光り方と傷の具合で判別できると思います。
本来のラストとは別物
例えばオールデンは多数のラストが用意されています。人気どころはバリー、モディファイドの2つですが、まれにアバディーンやミリタリーが出てきます。いずれも形状が異なるので、同一サイズでも履き心地は別物なのは当たり前ですよね?中古靴でもそれが適用されるかといえばそうではなく、例えば新品のバリーラスト8.5Eと3年使用された中古のバリーラスト8.5Eは履き心地が別物です。ラスト・サイズが同じでも前所有者が使用したことでインソール下のコルクは沈み込み、アッパーは彼の足型に合わせて変化してしまっています。新品購入ならコルクの沈み込みとアッパーの伸びが自身の足に合わせて徐々にフィットしていきますが、中古靴の場合はすでに伸びきってしまっているので時間をかけても自身の足に合わせることが難しいのです。
これが中古靴でサイズを合わせることが難しいと言われる理由の一つで、私も新品で購入したアバディーンラスト8.5Dと中古で購入したアバディーンラスト8.5Eではウィズが異なるのに双方あまり違いがないほどに感じられました。中古靴しか履いたことのない人は本来のラストの履き心地を知らないと言っても過言ではなく、中古靴の履き心地で全てを判断することはできません。
ちなみに私は気になるブランド靴があったらまず中古で買っておおよそのサイズ感を確かめた上で放出し、どうしても欲しいと思ったら新品を輸入するようにしています。
失敗しない購入法
中古靴はコスト的には良くても自分の足にフィットする個体が出てくるかは運次第です。よって一発で当たらなくても複数回試してみることが重要で、いかに良個体と巡り会えるかという点では新品以上に一期一会感があります。まぁそこまでするなら新品で買った方が手っ取り早いんですがそれを言っては元も子もありませんからね笑
半値以下で自身の足にフィットする美品個体が市場に転がっているのも事実ですが、それが自身の足に合うかどうかは別問題と認識しておく必要があるのです。1回や2回中古靴を試してみてフィットしないと思っても、前所有者の足型に革が伸びてしまっているんだからそれで合う方が稀なんです。中古靴を検討するならば、これを前提として複数回粘り強く試してみることが重要です。
上記を踏まえ、購入の目安としては下記のように基準を作るといいでしょう。
- 新古品なら定価の60~70%、履き古されていない中古美品なら40~50%あたりを目安として相場をチェック。
- 相場外の出品はどうせ買わないので無視。失敗した時のために自分が出品しても損しない価格であることが必須。
- 需要のあるブランド・モデルはある程度相場が固定化されているが、無名ブランドは極端に安くなるので価格交渉する価値あり。
- 状態についてはアッパーの傷と色味、インナーのロゴ削れや変色を新品個体と比べて判断。目立つ場合は価格交渉通りやすい。
- アッパー傷は元のカラーよりブライトなクリーム塗布で隠せる場合もある。
- フィット感が合わない中古靴は永遠に合わないものとして即放流、損しない購入基準で次の個体を試す。同じサイズでも足型でサイズ感は大きく変わる。
フィット感が合わせにくいというのが最大のデメリットなんですが、それありきで何度か買っては放流することを繰り返していると、完璧にフィットする個体が流れてくることもあります。少し時間が掛かりますが、コストと時間はトレードオフなので、安くハイエンドな靴が欲しいなら定期的にオークションやフリマアプリを覗く習慣をつけておくとよいでしょう。