新製品が出るたびに注目されるメーカーは何も老舗に限りません。音さえよければ創業年など関係ないのが昨今のオーディオ事情。Campfire Audioはその代表的なブランドで、ALO Audioのイヤホン部門としてブランドを確立したのが2015年夏、独創性の高い音質を追い求める姿勢がマニアに受け、新モデルの動きがあれば真っ先に注目されるメーカーです。合う合わないは人それぞれあるでしょうが、Campfireが嫌いな人も新機種が出たらなんやかんだ気になって試聴したくなる魔力を秘めています。
そんなCampfireがブランドを立ち上げたきっかけとなったのがSENNHEISERのIE800、言わずと知れたダイナミック型の名機ですがCEOであるKen氏はこのモデルに感銘を受けて同じくダイナミック一発のLYRAをファーストモデルとしてブランドを確立させました。技術的にも材料調達にも難のあるモデルが多く生産中止となるスパンが早いメーカーでもあるため、LYRAを入手するためには流通している中古を狙うしかないのですが、そのエッセンスを受け継ぐ後継機種が多数用意されています。当記事ではCampfire Audioの歴代ダイナミック一発モデルを一挙まとめます。
LYRA
先述した通り、Campfire Audioの始まりとも言えるモデル。2015年7月発売、当初はたしか¥85,000くらいで、約1年後に材料供給が難しくなり生産中止に。それが判明してから新機種の告知が出るまでは中古価格が新品相当まで高騰しました。
私も発売直後にLYRAを購入し愛用していた時期がありました。半年ほどでドライバー不良が発生し新品交換、同時期に購入したJUPITERもMMCX不良で交換となり、このメーカーからは手を引くことになったのですが、音に関しては好みの機種が多く、毎回買おうか買うまいか葛藤することに。
今更細かくレビューしても新品では入手できませんから簡潔にレビューすると、
IE800をライバル視して開発されただけあって、どのファクターに着目しても不満が見当たらない優秀なモデルです。音質傾向としてはミッドローからミッドハイをじんわり強調してくれるカマボコ型。ボーカルは若干引き気味ですが、遠すぎることもな全パート横並びに楽器の音をメインで聴きたくなるタイプ。IE800とは傾向が異なるのでどっちが上と優劣をつけられなかったのを覚えています。
重低音は苦手ですがナチュラルで聴き疲れしにくく、音場も広めなのでどんなジャンルも無難に鳴らしてくれるのが最大の売り。一聴しただけではコイツの良さは感じ取りにくく、Campfire Audioにしてはスルメ系です。最近のモデルはどこか突き抜けた特徴を持っているので、LYRAが相対的に低く見られがちですが、買い換えずに使い続けているLYRAラブの人もかなり多いと思います。私も新品を買い戻せるなら再度入手したい。
LYRAII
初代LYRAは筐体にジルコニアを採用していましたが、この金属の取り扱いが難しすぎて1年足らずで生産中止。そこから半年後に、LYRAの政党後継モデルとして登場したのがLYRAIIです。こちらはもう少し処理方法を考えて、チタンよりも硬度が高いリキッドメタル合金を採用し、内部のドライバーもベリリウム製という点は共通していますが筐体材質の変化に合わせてチューニングを変えている別物です。
音質傾向としては初代LYRAの濃密な中域が若干薄くなり、その分高域の見通しが良くなっています。個人的には初代LYRAの独特な音場を気に入っていたので変な残響感が感じ取り難くなったのはマイナス点ですが、一般的に聴きやすいのはIIの方だと思います。クリアさはどっこいどっこいですが、情報量、分離感ともにIIの方が若干上で、音圧もIIの方が強めです。
つい先日、このLYRAIIと旧フラグシップモデルVAGAの2種類の生産中止が決定し、流通在庫限りとなっています。直販でデッドストックが11月まで残っていればブラックフライデーセール行きになりそうなので、安く入手するなら待つという選択肢もありでしょう。
VEGA
最新のATLASが登場するまでダイナミックのフラグシップの座に君臨していたモデルがVEGA。LYRA→LYRAII→VEGAは筐体の材質こそ違えど、形状は同等で耳への収まりは非常に良好でした。
Campfire一好みが分かれそうなモデルで、初代LYRAの音場と低域を強化して、中高域を少しクリアーにしたような感じ。パワフルな低域が合わなければこんなもん使ってられるかと言われそうな変態モデルです。音場が広くボーカル含む各楽器の合わせ方が非常に上手いですね。ユニバーサルイヤホンの中でもトップクラスに低域の質が高く、中高域に重ならずそれを際立たせるような空間を創ってくれるのが特徴です。
先述した通り、LYRAIIと同時に生産終了の告知がなされました。初代LYRA同様に素材処理の問題が大きそうではありますが、定価15万のモデルで中古は7~8万台、直販でも10万ちょいとANDROMEDAほど価格を維持できていないのも要因の一つと思われます。
ATLAS
今年5月に登場した最新モデルで定価16万超え。BAモデル、ハイブリッドモデルを含めてもCampfireで最もハイグレードな位置付けです。
採用されているドライバーはVEGAのA.D.L.C(アモルファス・ダイヤモンド・ライク・カーボン)を一回り大きくした10mm径のものが使用されています。筐体にステンレスを採用し、VEGAまでの小ぶりな角ばった形状を一新、この価格帯の機種にしては珍しく耳掛けではなく下から装着する設計に変更されました。
音質としてはそれまでのダイナミックモデルとは打って変わってBAマルチのような全帯域にわたって濃密なサウンドを奏でてくれます。とにかくエネルギッシュで、情報量が多すぎるからこそ聴き疲れしやすいデメリットも。
まとめ
Campfire Audioはダイナミックモデルからは始まったブランドなので、どのモデルも完成度は非常に高いです。価格帯も8万台から16万超えと容易に手を出すことはできませんが、他メーカーの同価格帯のモデルと聴き比べても勝負できる機種が揃っています。問題はすぐに生産中止になってしまう点で、LYRAIIやVEGAが入手困難になったら残るダイナミックモデルはフラグシップのATLASのみということに。VEGAが10万以下で投げ売りされれば間違いなく買いなのですが、流通在庫がどこまで持つかしばし様子見としましょう。
今後も新しいモデルが追加されたらCampfire Audioダイナミック史として随時更新予定。