EDWARD GREEN(エドワードグリーン)の成り立ちとラストを一挙紹介

「どの靴が最高か」

この問いの答えは、人によってBerlutiだったりJohnLobbだったり山陽山長だったり、それぞれ異なるのが当然だが、

私だったら「EDWARD GREEN」と答える。誕生から現在に至る歴史が好きだからだ。

 

1890年英国ノーサンプトンに創業者のEdward Green氏が工場を置いたのが始まりだ。

そこから数々の経営難に苛まれながらも大手ブランドに吸収されることなく、独立したブランドとしての地位を固めて現在に至る。

豊富なラストを持つことを強みとし、最高峰の革を持って作るは芸術品とも呼べる作品を次々と世に送り出してきた。

間違いなく品質が伴ってのブランド力であると言える。

今回は革靴界の中でも屈指の知名度を誇るEDWARD GREENの成り立ちと2017年現在のラインナップを紹介したい。ラストを語るには歴を語らなくてはならないので、記事としてみると少し長くなるが、用意されているラストだけ知りたい方は飛ばしてくれてもなんら問題ない。

成り立ちと2度の経営難

上記でも記載したが、創業は1890年、英国ノーザンプトンの地でブランド名となったEdward Green氏が彼の息子3人がミリタリーブーツを主とした革靴工房を設立した。

ノーサンプトンは紳士靴メーカーのメッカでもあり、他に「JohnLobb(ジョンロブ)」「Church’s(チャーチ)」「Tricke’s(トリッカーズ)」「Crockett&Jones(クロケット&ジョーンズ)」「Cheaney(チーニー)」「Grenson(グレンソン)」が立ち並ぶ。革靴マニアならば一度は訪れてみたい眉唾物の観光スポットである。

瞬く間にイギリス全土にその名を馳せ、「できる限りの上質を求める」をキーワードに、名実ともに最高のブランドとなった。

 

しかし1979年、最初の危機が訪れる。

エドワードグリーンの革靴部門は創業者の息子達の手によりアメリカ企業に売却されアメリカ資本となってしまう。その後、倒産寸前まで追い込まれ一時は破綻するかしないかといった状態に陥ってしまう。

しかしそのままでは終わらない。1983年、復活させようと手を差し伸べてくれる人物が現れたからだ。

今は亡きイタリアの靴デザイナー、”ジョン・フルスティック氏”である。彼はEDWARD GREENを 借金の返済額プラス「1ポンド」で買収したのである。ただ借金を肩代わりしただけであり、本当に瀕死のEDWARD GREENを救いたい思いだったのだろう。

さて晴れて社長となったジョン・フルスティック氏は、デザイナーとしての経験を活かしてブランドの再興に着手する。 履く人を選んでいたラストをより多くの人の足に合うように”フィッティング”に重きを起き修正を重ねる。またカラーも黒に留めず、ブラウンのパティーヌ靴を手がけたり、創業当初から重視してきた品質を保つために、少数精鋭の職人による少量多種生産というスタイルに転換させた。

製作されたラストは今でも伝説として語られる「#202」である。最高級の革を持ってこの拘り尽くした木型に沿って作られる革靴の履き心地は世界一と評された。この時インスパイアされたのはポルシェ911というのは有名な話だ。もしこの時の社長がデザイナーではなかったら別のものから発想を得ていたのかもしれない。

 

2度目の危機は1995年のことだ。

エルメスがライセンスを所有するJohnLobbの革靴の制作を開始した頃である。

当時のEDWARD GREENの品質は非常に高く、JohnLobbのみならずエルメスにも高く評価されたのである。そのクオリティの高さを持ってエルメスはEDWARD GREENに買収を持ちかけた。EDWARD GREENからすれば願ってもいない話で、当時イギリス国内では圧倒的な知名度があったもののヨーロッパ大陸的にみればまだまだ。まずはフランス進出を検討していたこともあり前向きな気持ちでエルメスと手を組んだ。しかしながら結局フランス国内への進出が上手くいかず経営も悪化。自社株をエルメスに売却する他なくなり、創業当時から稼働していた工房とジョン・フルスティック氏に救われ誕生した看板ラスト#202までもが差し押さ得られる形でエルメスグループから脱却することができた。

工場もなければラストもない。シューメーカーとしては絶望の淵に立たされるも、同じノーサンプトンの地で革靴を作るCrockett&JonesやGrensonといった他ブランドに製造を委託することでギリギリ存続できた。他にもバーニーズニューヨーク、フォスター&サン、オールドイングランド、ロイドフットウェア、W&Hギデン、エーボンハウス、ワイルドスミス、ポールセンスコーンなどにも委託依頼した。自社品以外にも委託品を手掛けることで少しずつ少しずつ力を取り戻し、#202に代わる新たなラストを作ることで復活を遂げ、今ではJohnLobbと並ぶ最高峰のシューメーカーとしての立ち位置を確立している。

ラスト

よく使われるラストを一挙紹介しよう。

数あるシューメーカーの中でもEDWARD GREENのラストは、フィット感に重きを置いた設計からmm単位の調整を施し、型番を変えている。

型式表記は2~3桁の数字で成されている。

 

#202ラスト

#202といえばEDWARD GREEN、EDWARD GREENといえば#202と言っても過言ではない。

基本中の基本ラストで伝統的なイギリス革靴の象徴でもある。

様々なスタイルに使われるが、中でも代表的なのはありとあらゆる場面に対応できる内羽根キャップトゥ”CHELSEA(チェルシー)”だろう。

 

#82ラスト

#202をベースにブラッシュアップを施したラスト。202よりもややロングノーズでいんさいどにカーブを描く。トゥを細く見せるために先端に近づくにつれて急激に曲がるため、合わない人も出てきてもおかしくはない。履き心地は202に軍パイが上がる。

 

#32ラスト

外羽根キャップトゥ”DOVER(ドーバー)”ラストとも言われ、ドーバー専用に開発されたラストである。

つま先はラウンドトゥでEDWARD GREENのラストの中で最も細身で、U字カットに合うようにデザインされている。

#33ラスト

#32をスクエアトゥにしたもの。同じくドーバーに採用されるが、U字カットをさらに強調させられる。

履き心地と好みで選んで問題ない。

 

#606ラスト

#202を全方位1mmだけ拡張させたようなゆったり感覚。

つま先がセミスクエアとなり、よりエレガントでドレッシーな風貌。

長さ方向はぴったりなのに幅が足りない甲高の人に合うよう設計されている。

個人的には#202と比べてみて、#606の方がボールジョイントに余裕があるためホールド感が良い。

 

#808ラスト

代表モデルはセミブローグ”ASQUITH(アスキス)”

細身で甲部分が低く設計されている。ハーフ〜ワンサイズあげないとタンが閉まらり切らない。

その上ラウンドトゥなので、足の形状がスクエア型だと絶望的だろう。

この場合は後述する#888がオススメだ。

 

#888ラスト

#808をスクエアトゥにしたもの。

インラインカーブ、アウトラインストレートの構造は同じである。

よりホールド感を持たせたい場合はこちらも採用されてはいかがだろう。

 

#890ラスト

#888を踏襲した新ラスト。

2015年のEDWARD GREEM生誕125周年を記念に製作された。

ポールジョイントを広めに取り、土踏まずから踵にかけてフィット感の高いフォルムを持つ。

888ラストではスクエアトゥだったがややラウンドトゥ寄りに戻した印象を受ける。

 

#915ラスト

こちらも2015年にリリースされた新ラストである。

#82の爪先を数ミリ伸ばして、インラインを絞りアウトラインはエッジを効かせたカットが特徴的だ。

元を辿ればこのラストも#202が祖先で、より現代風な風貌に改良されている、

 

#58ラスト

カントリーラストと呼ばれ、GRESHAM(グレシャム)などに使用される。

カントリーシューズのゆったりした履き心地を体現させるために、ぼてっとした丸みのある形状。

 

#72ラスト

#58の後継ラストでトゥの形状をよりシャープにしている。

またコバが削ぎ落とされ、威圧感を減らすことができた。

 

いかがだっただろうか。

ある種不可抗力によるものだが、メーカーとして堕ちるところまで堕ちたにも関わらず

今では世界中の愛好家に好まれるのは、「より上質のものを」という創業当時からの理念を貫いているからに他ならないと私は思う。

革靴界を引っ張る存在として、旧来の名作に囚われず、その時代のスタイルに対応できる革靴を作り続けていってほしい。

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