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最高峰ダイナミック型イヤホン DITA Dream 音質レビュー 購入直後のファーストインプレッション

20万円のイヤホンと聞くとどのような印象を抱くだろう。

音質にこだわりを持たない大多数の方から「狂気の沙汰としか思えない…」という心の声が聞こえてきそうです。ここ最近では1万円前後の低価格帯から5万円クラスのミドルレンジで”音質ヨシ”装着感ヨシ”遮音性ヨシ”の三拍子揃った機種が続々と出ていますし、イヤホンスパイラルの深淵に飲まれた私も「(もうこれで)良いじゃん」状態に陥っています。とはいえ各価格帯の機種をいろいろ所持していた方が飽きが来ませんし、おもむろに一人試聴会を開催して「ああでもないこうでもない」と自分の好きな音を探すのが楽しくて仕方がありません。費用対効果が悪くても、良いものは良いと自分が言えたら十分じゃないですか。趣味ってのはそういうものです。

さて、今回の主役は”DITA Dream”。

発売から4ヶ月が経過、買おうか買うまいか考えている内に生産終了となってしまいました。

8月の最終入荷がラストチャンスだったんだ…と落胆していたところ、友人が入籍祝いに確保してくれており、叙々苑をご馳走することと引き換えにDreamを入手することができたのは本当に感謝しかありません(さすがに高額なのでタダ貰いは気が引けます…)。代理店の告知ではデッドストックがある様子ですが、いつどれほど入ってくるかが不明ですのでこのような形でゲットできたのは何ともラッキーな話です。

Dドラ1発で20万とは高すぎではないかいう意見もございます。私も最初は高いと思いました。しかしながらDreamの場合、オーディオイベントでカスタマーの生の声に耳を傾けながら幾度も試作品を作りブラッシュアップを繰り返して発売に至ったので、相応の開発費用が掛かっていそうです。この価格でもメーカーとして高い利益は取れていないでしょうが、入荷される度に即売り切れになるくらいなので市場原理的には適正価格ということです。中古品でも定価以上で売買されている点に鑑みると、ややプレミアが付いてしまっている感がありますがそれだけ欲しい人がいるということなんでしょう。

筐体のデザインはチタン製で手のひらに乗せた感覚ではズッシリきます。従来品と同じく外側面にはDITAのロゴが刻印されており、シンプルながらもメカニカルなデザインで好みです。真鍮製のBrassとは違い、定期的に磨きを入れてやる必要がないのは楽ですね。

機能的特徴としては、Awesomeコネクタを搭載したケーブルが付属します。これはDAPに挿す端子部分を取り替えることで3.5mmアンバランス、2.5mm/4.4mmバランス端子を一本のケーブルで完結させられるというもの。ケーブルは30年以上の歴史を持つオランダのオーディオメーカーVan den Hulとの共同開発にてAnswerで実績のある”The Truth”が採用されています。Answerではリケーブル不可とすることで接触点を減らし、”最高の相性”を謳った組合せで純粋に音を楽しんでほしいという想いがあったようですが、Dreamでは2pinリケーブルが可能です。ただし付属しているケーブルの質が高く、あえて別ケーブルに換装する必要は今のところ感じられません。Awesomeプラグの汎用性が高いので同じケーブルをもう1本予備で置いておきたいです。とはいえケーブル単体で6万円弱と手軽に買えるものではないのが難点です。

Awesomeコネクタについて。一般的なリケーブルでは筐体側のコネクタが2pinなら抜き差しすればするほど孔を拡げてしまいますし、MMCXなら接触不良の原因を作ってしまうことになります。この部分を触らずにアンバランス及びバランスを使い分けられるというのが本当に便利で、手持ちのカスタムIEM全てのケーブルにAwesomeプラグを導入したいくらいです。SONY WMシリーズやIRIVER AKシリーズなどバランス端子を備えているDAPを使用している方は特にその恩恵に与れますし、バランス端子を搭載しているDAP+ポタアンといった組合せで運用している方もプラグさえ所持しておけば接続先に応じて使い分けられます。プラグは4pin構造でケーブルに挿し込みリング状のネジで固定されているだけなので付け外しは容易です。無理に扱えばpinの一部が損傷する恐れがあり、横方向にトルクを掛ければポキンと逝ってしまいそうなので、初めて付け替えをする方は慎重にどうぞ。

ケーブルの耳かけ部分は形状記憶で丸みを帯びており、装着するときは問題なくシュア掛けできます。ただ熱圧縮で形状記憶されているので耳の内側にフィットさせようとしても上手くいかず、耳形状によってはケーブルが浮いてしまうこともあるかもしれません。眼鏡を掛けている人であればつるの部分に挟んでやれば固定できるので、眼鏡ユーザーにとってはありがたい数少ないケーブルです。ケーブル自体は固めで跳ね返りが強め。EffectAudioのケーブルに慣れていたら取り回しが悪く感じますが、Awesomeコネクタの使い勝手が良すぎるので些細な問題でしょう。

さてここから音質のレビューに移ります。まずはAK380+AMPの2.5mmバランスにて。

一聴して驚いたのはレンジの広さと曇りのない音像。シングルドライバーにして何故これほど広い帯域をカバーできるのか、そしてそれぞれの音域がボヤけることなく音の波として襲ってくるような感覚に陥るのは、搭載されているドライバーのスペックの高さによるものでしょう。一般的にR側とL側で出力される情報が異なるので、曲によってはR側しか鳴らない、または極端にR側に偏るフレーズがあったりします。担当する帯域をドライバー毎に分担させるBA多ドラが顕著なのかもしれませんが、そのような違和感を一切感じられないくらい左右のバランスが良くできています。

試聴曲をいくつかピックアップします。ポップス部門から”アゲハ蝶(ポルノグラフィティ)”。ポルノグラフィティはラテン的な曲調が多く、リズム感をテストするのに適しています。その中でも”アゲハ蝶”は指折りの名曲でおそらく知らぬ人はいないでしょう。低域を支えるベースが特に心地よく、各パートの仕事っぷりがはっきり捉えられます。楽器ごとの分離感が強いので、奏者の技術が浮き彫りになるのと音源の粗をモロに拾います。何度圧縮したか分からないmp3音源と直近でCDからリッピングしたFLAC音源だと、後者の方が各パートの繋がり方が自然で明瞭な音に聴こえます。粗い音源を良く聴かせるタイプのイヤホンもあれば、音源の違いを露にするものもありますが、Dreamはきっと後者なんでしょう。

ロック部門から”迷宮レストラン(アルカラ)”。この曲はボーカルなしでヴァイオリン、ギター、ベース、ドラムという構成。高域が刺さると言うこともなく安定感がある。同じロックでも低域が強く出てほしい”刃(THE BACKHORN)”。ベースとドラムのキックがメインとなる曲調だが低域がボワつくことがなくライブハウスの前列でドラムストロークを目で追うが如く一音一音はっきりしている。量自体が多いというわけではなく中域(ボーカル帯)に重ならない量で留めているので、質の良い低音をボワつくことなく聴かせてくれます。

ライブ音源部門から”アカイソラLive ver.(絢香)”。ライブ音源ならではの空間の広がりとジャズ調のパート構成がシンプルながらもボーカルとピアノに余韻がある。苦手なジャンルの少ないDreamだが、数が少なめでごちゃごちゃしていないライブ音源との相性はめちゃくちゃ良いです。私自身、中高域に全振りしたような機械的な音が好みで、実際にライブやコンサートに行くことは稀です。どちらかと言えば現地に行くお金で、より多くの音源を集めたいタイプなのですが、Dreamの立体的な深みのある空間表現に染まってしまうと生演奏を聴きたい衝動に駆られてしまいそうです。

女性ボーカル部門から”満天(Kalafina)”。ベース、ピアノ、ヴァイオリン、ボーカルという構成で、低域のキレと中高域の艶めかしさが売りの一曲。テンポは速すぎず遅すぎず音の強弱にメリハリがあります。Dreamはシンプルにボーカルを近い位置で聴くのにも適していますが、譜面上の”フォルテ”や”ピアノ”といった強弱記号に忠実なのでジャズやクラシック調の曲も問題なく対応できそうです。

ヒーリング部門からFloarting Colours(Mare Et Monti) 心地の良いエレクトロニカで ピアノが主体のダウンテンポ。ボーカルなしで映画やゲームのサントラのような曲調も先述したように強調のつけ方が上手く、苦手なジャンルが存在しない印象を受けます。

次に、3.5mmアンバランスにプラグを付け替えてみます。当然のことながら2.5mmバランスと同傾向です。「ハッキリここが違う」と言い切れるところはほとんどないというのが率直な所感です。やや高域がシャキッと見通しが広くなったかなという程度。コネクタを自由に付け替えられるメリットを活かして、バランス接続が搭載されているDAPを使っているのであれば通常バランスで運用しDAP試聴時にアンバランスに付け替えすればいいし、バランス接続が搭載されていないDAPであればコネクタを持ち歩いてバランス環境での試聴をして違いを見出すのも一興でしょう。バランス接続の方が出力が高いことが多いので、その部分で優位性はあるのでしょうがアンバランスでも十分すぎる音質です。それよりもDAPの性能差や間に噛ませるアンプの有無で大きく音が変わるので、そちらをいじる方が変化を捉えやすいです。

早速AK380AMPをオフにしてアンプ接続してみます。至る所でHugo2との相性がすこぶる良いとの話を聞くが、生憎Hugo2は持ち合わせていないので初代Hugoに接続。音量カラーは下から3段階目のイエロー。他の手持ち機種だと一番下のレッドで十分大音量なのに、Dreamはここまで上げて丁度良く、音量取りにくい機種ということを実感しました。音の変化は奥行きのある空間はそのままに中高域の情報量が増して濃密になります。Hugo本体の味付けもあるかもしれませんが、中高域が濃ゆすぎて胸焼けする曲もあるので、単純にAK380+AMPの上位互換にはなりません。両者を比較するとスッキリ聴きたい時はDAP単騎、それで物足りない時はHugoというように使い分けするのが良さそう。どっちが好きかと言えばHugoなしですが、エージングによる音の変化が顕著であれば再レビューしたい。

まとめると、「本当にシングルドライバーですか?」と言いたくなるようなレンジの広さとリアリティ溢れる空間表現に秀でており、ここまで人気が出る理由が分かった気がします。モニターと言ってもただ分析的に聴けるということではなく、音楽が本来持つ豊潤な表現力に着眼できる機種です。ライブ音源との相性の良さは折り紙付きで、同じ曲のライブバージョンだとどのように変化するのかが今一番気になるところ。機材が揃っていても音源集めに終わりはありませんね。

最後に、在庫も枯渇し試聴環境すらままならない状況が続いているものの、近いうちに入庫するという話です。ただでさえ生産数が少ないのにここまで話題になってしまえば争奪戦になることは間違いないでしょう。本当に欲しい方へ行き渡るよう祈っております。

180107追記

同じくダイナミックのハイエンドHiFiMan RE2000のレビューを作成致しました。

その中でDreamとの比較を折り交えているので宜しければこちらもどうぞ。

ダイナミックイヤホンの極地点 HiFiMan RE2000の購入後レビュー -DITA Dreamとの比較を交え-

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