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私が初めてカスタムIEMの存在を知ったのは3年前。この頃はいろんなレビューを読み漁り、クリプシュX10で満足していたのがとても懐かしいです。一度音質に拘り始めたらより上位の機種はどうなんだろうと、瞬く間にハイエンド帯に足を踏み入れそのまま抜け出せなくなってしまいました。

X10→Campfire Audio LYRA→JUPITER→Unique Melody MAVERICK→AKR03(JHAudio Roxanne)とイヤホンスパイラルのテンプレのように沼に陥ったのはまだ最近の出来事。

次第にユニバ機に満足できなくなりカスタムIEMに辿り着くワケです。

それなりにコストは掛かるものの「毎日使うものだから少しくらい拘ったっていいじゃない」

私の中で、ハイエンド帯に踏み入れる時の魔法の言葉です。10万でも毎日使うなら@300円ですからね(安い!)

カスタムIEMは最初から一本目の感触が良ければ性格の異なるモデルを買い足して使い分けようと決めていました。

ファーストオーダーがVision Ears “VE5”2本目に同メーカーの“VE6XControl”3本目にJomo Audio “SAMBA”、最後にFitEar “MH335DWSR”

トータルで4本もオーダーしてしまいましたが、今時点ではこの面子で大大大満足です。ここまで投じた諭吉の人数に見合うものがあるかは疑問ですが、日々のミュージックライフが向上するのであれば問題ありません。逆に、他のどんな機種を聴いても「別にいらんな」と即断できるほどになっており、物欲の塊である私にとって異常事態です。

ここからが本題。複数のカスタムIEMを愛用している身ですが

「実際カスタムIEMってそんなに良いものなのか」

最近特に感じるのですが、代理店の誇大広告が鬱陶しくないですか?数千円で購入できて、それなりの効果が見込めるなら「これ、イイよ」と紹介しまくります。けれども、ピンでも数万、キリで30万以上、選択肢を広く持つなら予算20万と決して安くないものを、大したサービスも享受できないクセに無責任に勧めすぎなんちゃいますの?と思うわけです。

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市場の現状

カスタムIEM市場の推移と現状について。2014年には5億、2015年には15億、2016年には25億、2017年以降はデータがないので分かりませんが2016年度以上は固いでしょう。2018年に入ると一通り行き渡ったのかカスタムIEM購入したぜ〜っていう声が少なくなった気がします。2019年も同様。市場の熱が冷めつつある感じがしますが、2018年のeイヤホンのオーダーランキングでは27万もする“Legend X”(EMPIRE EARS)がトップの売上となっているのは興味深いですね。

https://www.e-earphone.jp/html/page492.html

eイヤホンでの2018年ランキングを上から見ると、

  • Legend X(¥272,000)
  • UE5pro(¥67,800)
  • ES60(¥158,000)
  • UE Pro Reference Remastered(¥129,800)
  • MH334(¥154,900)
  • UE11pro(¥156,800)
  • VE5(¥197,000)
  • UE18pro+(¥192,800)
  • AAW A1D(¥36,900)
  • VE8(¥320,000)

2016年のランキングでは比較的手の届きやすいアンダー10万のものから個性の強い15-20万ラインのものが選ばれやすい傾向にありましたが、直近では30万クラスのモデルが2機種、10万円台後半のモデルも増加傾向にある感じ。10位以下も20万クラスのモデルが目白押し。UEは相変わらず売れまくりで、UE5Proは常にトップ3以内に位置する人気ぶりです。手頃感がありますから廃盤にならない限りロングセラーを貫いていくものと思います。

市場が拡がるということは、店員に流されてオーダーしてしまう人も少なからずいるハズです。盛り上がりを見せているとはいってもたかだか30億足らずの市場ですから、ネット上で参考になる情報は少ないのが現状。ポータブルオーディオというジャンル全体でさえマイナーなのに、その中のさらに小さい括りに過ぎません。

いきなりカスタムコーナーの扉を叩いて、試聴後即購入する人は少ないでしょう。高額商品ですから入念に事前情報をチェックされると思います。しかし事前情報が少ない故に出来上がったモノを付けてみたら「思ってたのと違う」

こうならないためにも、その特性を細かくお伝えできれば、と思います。

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メリット

デザインを自分で決められる

シェルの形状、カラー、フェイスプレートデザインを自分の好みに合わせられます。無料で付けられるのはカラーくらいですが、メーカーによっては追加オプションで、グリッター、ウォッチパーツ、アートワークを入れられるので、他人と被ることがまずありません。逆に好みのデザインのIEMがあれば、オプション素材によっては同じオプションを付けても文様違いのデザインをオーダーすることもできます。思い描いていたデザインで仕上がってくるなら確実に所有欲を満たしてくれるでしょう。デザインに興味なし、音さえよければそれで良いという方もいらっしゃると思いますが、趣味で使うものなんですからデザインに拘ってなんぼですよね。

完璧な装着感

自身の耳型インプレッションが元なのでピッタリとフィットします。ゴチャゴチャとイヤーピースの位置を合わせる必要性がなく、耳に嵌める際にストレスを感じません。特に左右の耳型が全然違ってユニバ機がフィットし辛い方は特に快適になると思います。

ただこれはひとつ間違えるとデメリットにもなり、一発でジャストフィットするカスタムIEMが出来上がってくるかは運です。そうなると装着感が良いどころか隙間ができて遮音性はガタガタ、ってことにもなり得ます。詳しくはデメリットの項でお伝えします。

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デメリット

納期が掛かる

自分の耳型(インプレッション)を採ってそれに合わせてシェルを成形してもらうためどうしても製作に時間がかかります。一律でカスタムIEMは何日でできると言い切れるものではなく、メーカーによって早いところは1ヶ月、遅いところは4~5ヶ月掛かるようなところもあります。カスタムIEMのメーカーの大半はプロミュージシャン向けに製造しており、どうしてもそちらが優先されてしまうわけです。

稀にメーカーの不備で作り直しによる納期倍プッシュという事例も出ていますが、そもそもの納期が掛かるようなメーカーであれば半年は完成品を受け取れない可能性があることを頭にブチ込んで下さい。さらに装着感が合わない場合はそこからリフィットによる微調整が必要となり、もう数ヶ月かかる場合があります。

ちなみに私の所持しているVision EarsのVE5はジャスト3ヶ月、VE6XCは2ヶ月ちょっと、Jomo AudioのSambaは1ヶ月半で作ってもらいました。国内代理店を通すより直接メーカーとやりとりする方が早くできる傾向にあります。(JH、64、UEなど) UMは今では直販不可になってしまったようですね。

他人にとって一切の価値がない

オーダーメイド品ということは、その価値を享受できるのが自分ただ一人のみということ。周りに聴かせてあげたくても耳型が自分のものなので音を共有することもできず、高額商品なのにリセールバリューを取れないがゆえに一度オーダーすると後戻りできません。

が、稀に中古のカスタムIEMを仕入れてリシェルすることで格安で自分の耳に合うカスタムIEMを作ろうと試みる方もいます。需要がないわけではありませんが、売却額は購入額の三分の一以下と雀の涙とまでは言いませんが格安で買い叩かれます。店に売ろうにもドライバー分の価値しかないので販売価格の15~20%がせいぜいっていうところ。オークションだと大体30%くらいが相場です。

定期的にヤフオクをチェックしているとリシェル前提の中古品が出品されているのを見かけるのですが、例えばFitEarの人気モデル“MH334”は5万円以下で落札されています。

後継機の登場で廃盤となってしまったUnique Melodyの鉄板モデル“MAVERICK II”もご覧の通り定価の3割弱です。

そもそも自分の耳型に合わせて作るカスタムIEMをオーダーすると決めたらその時点で手放すことは考えないでしょうが、気に入らなかったら売却して次の機種を…っていうサイクルを作ることはできません。同一モデルでもユニバーサルモデルとカスタムモデルの2パターンを選べるものも存在しますが、このリセールという観点からユニバーサルモデルも用意されているならばそれを選ぶに越した事はありません。

遮音性にはそれほど期待できない

装着感としては完璧です。が、自分の耳型で作っているからといって遮音性はそれほど高くないのが実情です。フィット感の甘いユニバーサルモデルより上ではありますが、期待値を高く設定していると拍子抜けします。完全な無音にはなりません。再生OFF時で、地下鉄のアナウンスやカフェのBGMがうっすらと聴こえる程度。もちろん再生ONにしたらほぼ聴こえなくなりますが、外音を完全にシャットアウトするものではありません。

ただしライブ用の耳栓としては非常に適していると思います。爆音による耳へのダメージを提言してライブ会場ならではのウーハーの響を肌で感じることに寄与してくれます。ドライバーなしのシェルのみでオーダーしたいくらい。

リフィット地獄に陥るリスク

自身のインプレッションを参考にしてシェルが作られているため、「全くフィットしない」なんてことは起きないと思われがちですが、インプレッションの取り方を間違えれば上手くフィットしないシェルが出来上がってしまうこともあります。

ここはインプレッションを取る補聴器屋の腕次第で、カスタムIEMが完成して実際に装着してみるまでは油断なりません。リフィット無しで済んだらラッキーです。まともにフィットするモノが出来上がるまで半年以上の時間を要するケースもあるくらいで、私のケースだとSAMBAが1回のリフィットで約1ヶ月、MH335DWSRが2回のリフィットで約2ヶ月余分に掛かりました。

保証期間が1年あるからと言っても『最初の1回のみ無料』『受け取り後1~2ヶ月まで無料』と無料対応の制限しているメーカーが多いです。場合によっては「まだ使用していないにもかかわらず装着感の調整のために金を取られる」ことも頭に入れておくべきでしょう。

これからカスタムIEMを検討する方へ

音とか値段を考える以前にデメリットの方が多いです。

オーダーメイド品全てに通ずることですが、ユニバーサルモデルのように気軽に入手できませんし、手放すこと=捨てることとほぼ同義です。音質については、ユニバ機でも良いものは良いし、カスタムでもイマイチなものも存在します。音質は個人の好みに拠るところが大きいので、メリットにもデメリットにも属しません。同じモデルであればカスタムの方がユニバ機よりも低音が締まって聴こえる傾向にあるので、試聴機と実機で若干音が違うなと感じることはあるかもしれません。

私としては装着感の良さが他のデメリットを凌駕するものと考えるので自分で使ってみて何一つ後悔はありませんが、これを他の人に勧めようとは思いません。だって十数万先払いして数ヶ月待って、どんな仕上がりになるか分からない時点でバクチですからね。

また万人がそうではありませんが、仮に一本目が上手く仕上がっても、違うテイストのモノが欲しくなるに決まっています。そうなってしまったらもう似たようなユニバ機に戻れるハズもなく、高額なカスタムIEMの中から次の一本を探す羽目になります。カスタムIEMはコストパフォーマンスの観点では最悪の部類。ここまでいくと、どこまで予算を出せて、好きな音に拘り切れるかに掛かりますので、中途半端に周りに流されてカスタムIEMに手を出すのはありえないと個人的には思います。

  • 妥協して下位機種を買うのはご法度。
  • 下位機種でもそれが欲しい音なら全く問題なし。
  • 欲しい機種が買えない価格ならカスタムIEM自体手を出さない方が無難。
  • 装着感はめちゃくちゃいいけど遮音性には期待するな。
  • 一発で完全にフィットするものが仕上がってくると思うな。

よく専門店が前面に押し出してくるメリットだけに気を取られずに、デメリットも含めて総合的に判断して下さい。

予めこういうものだと分かっておくと、間違いのない買い物になると思いますよ。

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