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一昨年の冬にオーダーしたJomo Audio Sambaを境にイヤホンスパイラルを抜け出し、しばらくカスタムIEMの新作が出ても興味が湧かなかったのですが、今年に入ってから定期的にカスタムIEMを聴き漁ってきました。 当初は手持ち機種で十分間に合っていることもあり新規オーダーするつもりはなかったものの、別のベクトルの好きな音というのが自分の中で確立されてしまったため結構前向きに検討している次第です。

直感でこれやと思ったモデルを決め、サクッとインプレを採取してポンと20万出す思い切りを持つことができればいいのですが、オーダーしたら引くことのできないカスタムIEMとなると慎重にならざるを得ません。今すぐ欲しいと思ってもビルドタイムが2ヶ月前後掛かりますから、それならばじっくり比較検討すればいいじゃんってことで各メーカーの新モデルを中心に、試聴を重ねています。(趣味としてあれこれ悩んでいる時間が一番楽しいというのも一要因ではありますが)

カスタムはリセールバリューが皆無なのでよ〜く考えてオーダーする必要があるのですが、装着感が完璧というメリットが大きすぎるので離れられませんね。

これまでの経緯と選定機種

試聴1回目

一発目はVE8、A-Z、GEMINI、ES60。VE5とVE6XCを現在使用しているのでVE8はかなり有力な選択肢に。

試聴2回目

次はあえて避けていたFitearの主要モデルをまとめて試聴。Fitearのモデルって試聴時は「イイ音ダネ」ってなるんですけど、これじゃなきゃいけないオンリーワンなポイントが見出せず、汎用2pinでない、付属ケーブルの反発が強すぎて使いづらいというマイナス要素もあって唆られません。ただし後述するESTだけは試聴段階でめちゃくちゃ好みでした。唯一の例外です。

試聴3回目

3回目はA12tがヒット、モニター系最強の隙が見当たらない優秀なマシンです。Flamencoは強烈な個性を持ちますが、Samba既所持であることと他の有力機種と同レベルの価格帯なので優先順位は落ちますね。ありえないですが10万円代後半なら余裕で候補入りです。Aetherは聴き疲れしないのは良いのですが、のっぺりしすぎててゴメンナサイ。

試聴4回目

そして一番の目玉はEMPIRE EARS。Legend XとNemesisが神掛かっており、2機種とも欲しいくらい。A12tも好印象なのは変わらず、Anole V6も音変できるのがGood、ESTもカスタム版が楽しみ。まだ発売していないので今回は除外。

試聴5回目

最後にJomo Audioがこのタイミングで新作カスタムを5機種も投下してきました。ハイブリッドMelangeの2モデル、DeuxとQuatreがかなり私好み。手持ち機種とも差別化が計れそうですが、Jomoらしい濃密な音はSambaでお腹いっぱいなので今回は除外。

まずは5機種に絞られた!

そんな経緯で、予算度外視で欲しいモデルの選定はひとまず完了!

  • A12t/64 Audio
  • VE8/Vision Ears
  • Legend X/EMPIRE
  • Nemesis/EMPIRE
  • UE LIVE/Ultimate Ears

頑張って絞ったつもりなんですがこれでも多すぎます笑 最初の一本ならばシンプルに一番欲しいモデルに突撃するのですが、メインが5本もあると音質面で似通っているモデルをオーダーしてしまったら最悪出番がなくなる機種が出てくる可能性大です。そうならぬよう、まずは手持ちの機種と比較した音質傾向をザッとまとめてみましょう。"良い音"と"手にしたい音"は別物ですから。

手持ち三機種の特徴

VE6XC/Vision Ears

評価点の高い項目は、"低域"、"解像感"、"迫力"で、高域のクリアさや余韻の項目は低め。しっとり聴くには向かない特化型です。

私の手持ちで最も稼働率が高い機種。初登場から4年も経っていますが今でも色褪せていません。スイッチ上のX2は一歩ステージから引いたようなクッキリサウンドでどんなジャンルにも使えるオールラウンダーですが。スイッチを倒すと音場がやや狭くなるものの低域UP、スピード感UP、迫力UPとバフが掛かりまくった唯一無二にX1に早変わり。これらを使い分けることができるのが最大のメリットで、高額ながらも愛用者の多いモデルの一つですね。

VE5/Vision Ears

この機種は私史上初のカスタムIEMで、完成品を初めて装着した時の感動は忘れられません。傾向としてはVE6XCをボーカル寄りにした感じ。必然的に"中域"が高くなり、"低域"が控えめになります。また中域の情報密度が濃いためVE6XCよりも鮮やかになります。正直VE6XCを先にオーダーしていたらVE5は不要だったと感じていますが、せっかく手元にあるので声を聴きたい時はVE5、声もパートの一部としてパワフルな楽器のサウンドを聴きたい時はVE6XCと使い分けしています。

Samba/Jomo Audio

VE6XCに次いで使用頻度の高いのがSamba。ユニバ.verとカスタム.verで音質傾向が全く別物の初期Sambaなので、中低域が非常に濃ゆく、高域も伸びやかな変態モデルです。音質傾向としては"中低域寄り"、"余韻"がかなり強めで弦楽器やパイプオルガンの残響感が堪らない一品。

当時「ANDROMEDAをカスタムにしたような音」と評されていましたが初期モデルに関してはANDROMEDAの欠片もありません。好き嫌いのハッキリ分かれる濃密サウンドで、Vision Ears以上に聴き疲れします。現行のチタン音導管を使用したSambaIIはもう少し中高域に寄せているのでしょうかね。

手持ち機種の傾向

基軸となる中域の情報量は高い水準で満たしており、低域に寄せるか(VE6XC)、分離感に寄せるか(VE5)、鮮やかさに寄せるか(Samba)と差別化できています。音質傾向として「中低域寄りで分離感強め、音場広めのモデル」や「高域が伸びやかでとにかく繊細なモデル」は手持ち機種と被る要素が少なくお蔵入りになる可能性が低いハズ。先に述べたカスタム候補はここ1ヶ月の間で試聴しまくっているので、手持ちモデルと被るか被らないかという観点で比較しましょう。

オーダー候補機種の特徴

A12t

スペック
Low*4, Mid*6, Mid/High*1, tia High*1 (旧A12はLow*4, Mid*4, High*4)
tiaドライバー、apexテクノロジー採用
国内価格26万、直販セールだと20万前後
モニター力が強い万能モデル

BA12基搭載のモニター型。64Audioは様々な技術を積極採用するメーカーで、小さな筐体の中に"tiaドライバー"、”apexテクノロジー”という二つの技術が適用されています。tiaドライバーのおかげで高域がより伸びやかになり、旧U12とは全く別物に生まれ変わった印象です。

apexテクノロジーも耳への負担を軽減してくれるとのことで、実際効果があるか否か一度試してみたいところであります。

音質傾向としてはtiaドライバーの存在と中高域にドライバーが偏っていることもあり、中高域の解像感が非常に高いのが特徴。後述するLegend XやNemesisが支配感の強い低域と広すぎる音場を強みとするならば、こちらは中域の情報量と高域の伸びやかさに軍配が上がりますね。ボーカルも比較的近いのですが、あらゆる楽器の音を拾ってくれるので、全パート横並びで押し寄せてくる感覚です。

手持ち三機種と比べるとSambaをモニターっぽくして中高域に寄せたイメージ。完全に別物ですが、濃密さで言えばどっこいどっこいか。情報量はA12tの方が多そうで聴き疲れもしやすそう。またボーカルが聴きやすいので、もしA12tをオーダーしたら声用のVE5がお蔵入りになる可能性が非常に高いですね。

VE8

スペック
Low*2,Mid*2,High*4の3Wayクロスオーバー。
お値段32万円と超割高。
分離感強すぎ、VE5の低域強化型の側面有り

JH AudioのAngieやJomo AudioのSamba、WESTONEのES80と同構成。

同メーカーの中ではVE5に近く、中域の解像感が極めて高いモデルです。ボーカルが近いだけでなく、楽器の分解能がA12t以上。Vision Earsにおいて解像感が高いのは当たり前ですが、音場が然程広くないのでブワッと横に広がる生々しさはありません。また楽器の分離感が既存モデルの中で最強レベルに強いです。個人的に分解能が高い方がストライクゾーンに落ちる傾向にあるのですが、VE8は正直やりすぎと思ってしまいます。

VE5とVE6XCをすでに所持している身としては、VE8を買い足す意義があまり感じられません。VE5だと女性ボーカル、VE6XCだと激しめな曲全般というように、基本的にオールマイティながらも特化している部分が薄い気がします。Vision Earsに残響感を求める方が間違っていますが、Legend XやUE LIVEの音場の広さと余韻の強さと比較すると、使い分けできるのは断然コチラですね。VE8も嫌いではないけど、価格を考えると優先順位は低くなりますね。

Legend X

スペック
DD*2,BA*5の10Wayクロスオーバー
synX crossover採用
23万台後半、直販できるが国内の方が安い
圧倒的な音場を持つイヤホンっぽくないイヤホン

巷で増えつつあるハイブリッドカスタム。Legend XはDD2基、BA5基の計7ドライバーを搭載した10Wayクロスオーバー。synX crossoverにより、ドライバーごとに帯域を指定することができます。

音質傾向は中低域寄りの弱ドンシャリで完全なるリスニングモデル。A12tほど情報量が凄まじいわけでもありませんし、VE8ほど分離感は強くありません。低域はふくよかで濃密ながらも質が伴っているのでやかましいと感じることが少なく、10Wayクロスオーバーと細分化されているにも関わらず音のつながりに不自然な部分がありません。低域を担当するDD2基により、深い所もしっかり出ています。

Vision Earsの硬質サウンドとは真逆ですが、空間表現力が他のモデルとは段違いに素晴らしく、現状手持ちの三機種に加えるならLegend Xが最も使い分けできそうです。ただRE2000と若干傾向が似ており、ユニバ機も含めると競合してしまいそうな感じ。RE2000は装着感が気に入らないので、両者横並びに比較してみて用途が被るならば最悪RE2000は嫁に出すしかなくなるかも。

Nemesis

スペック
DD*2,BA*3の10Wayクロスオーバー
synX crossover採用
18万台後半、直販できるが国内の方が安い
Legend Xより低域の支配力が強いリスニングモデル

Legend Xの一つ下に位置するハイブリッドモデル。BAが2基減、synX crossover技術により8Wayクロスオーバーです。

音質傾向もLegend Xと似ていますが、大きく異なる点は低域の支配力でしょう。こちらも音場が広いのですが、低域のパワーと高域のシャキッと感はNemesisの方が上手です。そのためベースの主張の激しい曲はもってこいなのですが、低域担当の楽器がいなくなった途端にまとまりがなくなってしまいます。

手持ちの三機種とも別の音なので用途が被ることはありませんが、よりオールラウンドに使えるA12tやLegend Xの方が私の用途に合っている気がします。ただ同じく低域をフォーカスするVE6XCと比べるとNemesisの方がウォームなので、VE6XCで聴くとアドレナリン出まくりな曲を別傾向に生まれ変わらせるならば有用な選択肢になるかも。非常に悩ましい。

UE LIVE

スペック
BA*6,DD*1,TTP*1のハイブリッドモデル
ケーブル端子はEstronと共同開発したIPXコネクションシステムを採用
付属するケーブルもEstronと共同開発したUE SuperBax
文字通りライブ音源との相性抜群

低域、中低域、中高域、高域の4Wayクロスオーバーで、TTPドライバー(True Tone Plus)を採用。

IPXコネクションシステムと呼ばれる最新の独自規格をEstronと共同開発。アーティストの厳しいライブ環境に耐え得る強度を誇りますが、一般用途では間違いなく不要でしょう。完全なるプロ仕様で汎用2pin、MMCXが使えないのが面倒です。

全帯域クッキリハッキリのモニター型ですが、抑揚のないのっぺらぼうのようなサウンドはなく聴いてて楽しくなるタイプ。64 Audio A12tとほんの少し傾向が似ていますが、UE LIVEの方が低域寄り、ボーカル域が前面に来ています。A12tの方が低域控えめで中高域の分離感が高いため、クリアさで言えばA12tに譲るものの、中域に限った情報量はUE LIVEの方が濃密です。

まさにLIVE音源を聴かせるためのチューニングで最高にハイになれそう。VE6XCと比べるとスピード感では劣りますが、情報量は此方の方が断然上です。それより問題なのはSambaとかぶる部分が多く、Legend XやA12tのような唯一無二感がありません。ケーブル端子、価格などの音質以外のファクターで優先順位は落ちてしまいます。

まとめ

じっくり比較してみると、A12t、LegendX(Nemesis)のどれかになりそうですね。VE8やUE LIVEは音は良いのは分かりますが、価格高すぎ、スペックが凡庸で他3モデルを差し置いてオーダーする理由が見当たりません。

手持ち三機種との使い分けを優先するならA12t>Legend Xとなりますが、RE2000を放出すればLegend X>A12tと逆転するのが判断を鈍らせますね。先日のポタフェスではどれもセールに引っかからなかったのですが、今後ポタフェスやらブラックフライデーなどでお得にオーダーできる機会があればいずれかに突撃したい。それまではじっくり試聴を繰り返したいと思います。

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